2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J23048
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯田 暢生 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | コンタクト構造 / Seiberg-Witten理論 / Kronheimer-Mrowkaの不変量 / Bauer-Furuta不変量 / Floer ホモトピー / シンプレクティック構造 / 結び目のスライス性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Seiberg-Witten方程式とよばれる4次元多様体上の非線形偏微分方程式の解析を通して, シンプレクティック, コンタクト構造とよばれる幾何構造を調べ, 幾何学的応用を得るという研究を行ってきた. 具体的には次のような研究成果が得られた. 1. 谷口正樹氏(理化学研究所)との共同研究により閉3次元多様体のコンタクト構造の新しいゲージ理論的不変量を構成した. これをSeiberg-Witten Floerホモトピーコンタクト不変量と名付けた. これは, ManolescuによるSeiberg-Witten Floerホモトピー理論をコーン状に広がる多様体上で考察することで構成されるものである. また, Kronheimer-Mrowka-Ozvath-SzaboがモノポールFloer理論の文脈で構成したコンタクト不変量の精密化と考えられるものでもある. また, この不変量と私が以前構成した, コンタクト境界を持つ4次元多様体の不変量との関係を明らかにした. その帰結として, シンプレクティック充填可能なコンタクト構造に対する非消滅という一つの基本性質を証明した. さらに, 正スカラー曲率計量の存在の障害といったRiemann幾何的な問題への応用を与えた. 2. 谷口正樹氏とAnubhav Mukherjee氏(Georgia工科大学)との共同研究により, 私が以前構成した, コンタクト境界を持つ4次元多様体の不変量を使った応用を見出した. より具体的には, Kronheimer-Mrowka によるadjunction不等式の手法を用いることで, シンプレクティック充填の余次元0埋め込みの障害や結び目のスライス性に関する応用を与えた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Seiberg-Witten方程式の高次元化および新しいゲージ理論的方程式の発見に取り組んだが, 著しい結果は得られなかった. 一方, コーン状の端を持つ多様体上のSeiberg-Witten方程式の解析によりコンタクト構造の情報を引き出す研究は, 順調に進展した. Seiberg-Witten Floerホモトピーコンタクト不変量の構成や, 私が以前構成した, コンタクト境界を持つ4次元多様体の不変量を使った応用はその例である. 現在, これらの不変量とシンプレクティックコボルディズムとの関係について活発に研究を行っている.
|
Strategy for Future Research Activity |
私が以前構成したコンタクト境界を持つ4次元多様体の不変量やSeiberg-Witten Floerホモトピーコンタクト不変量に対し, 主にシンプレクティックコボルディズムとの関係の観点から, さらなる性質の証明を進める. さらに, これらの不変量の計算手法の確立や, コンタクト, シンプレクティック幾何学および純トポロジー的な問題への応用を進める. また, 新しい方向性として, Seiberg-Witten方程式を用いるもの以外にも, 高階インスタントンを用いたコンタクト, シンプレクティック構造の研究も行う. 高階インスタントンは元々物理学においても研究されてきたものであるため, 数理物理的な観点からの研究も行うことが重要である.
|