2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J23054
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横山 未来 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | カンボジア / 先アンコール時代 / 真臘 / サンボー・プレイ・クック遺跡群 / 土器 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題「先アンコール時代の土器編年と地域間交流の復元」では、東南アジアの初期国家やのちのアンコール王朝の成立を知るうえで重要である先アンコール時代の遺跡の出土遺物の分析を通して、国家の成立・発展過程と交流関係の実態を解明することを目的としている。 2019年度(平成31年度)は、特別研究員採用初年度にあたり、修士課程での研究成果を整理し、博士学位取得に向けての基礎的な調査研究を行った。 カンボジアの現地調査では、分析対象とする遺物の台帳作成と遺跡群における測量調査を実施した。調査に際して、測量機材や解析ソフト(GISなど)を用いた技術研修を行い、今後の研究にとって必要と思われる先端技術を応用した調査技術の習得にも努めた。 また、周辺の同時代遺跡に関する知識を得るため、これまでの研究で欠けていた周辺諸国での実地調査も実施した。 成果発表の面では、これまでの研究成果をまとめる形で、内外の学会で発表しているが、今年度は初めて英語でのポスターセッション発表(単著一本、連名一本)を行った。ポスターセッションの発表内容をもとにしたフルペーペーは、2020年3月末刊行の論集に掲載されている。さらに、早稲田大学で2019年1月に開催された国際シンポジウム(メコンがつなぐ文化多様性―東南アジア文化遺産研究の現在―)では主催者側として積極的に運営に携わり、国内外の研究者の人脈を広げるとともに、個人の研究についても各国研究者と積極的に意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別研究員DC1の採用初年度は、修士課程での研究成果を整理し、博士学位取得に向けた基礎的な調査研究を実施した。 カンボジア現地調査では、来年度以降の資料調査と発掘の準備として、既往調査における出土遺物の確認と遺跡群の測量調査を行った。日本国政府アンコール遺跡救済チームの遺跡管理事務所には、同遺跡群における過去の発掘調査の出土遺物が保管されている。整理状況および保管状況を確認するため、箱ごとに写真を撮影し、遺物台帳を作成した。また、遺跡群では、基準点作成と伽藍構成を確認する測量調査を実施した。同時に、ライダーデータをもとに、遺跡内の踏査も行い、遺構の所在と過去の発掘調査地点を確認した。 日本国内では、現地調査に必須である測量や解析ソフトを用いた調査技術研修を実施した。また、これまでの調査・研究で得られたデータをインベントリーとして整理した。 さらに、周辺の同時代遺跡に関する知識を得るため、計画を前倒しにし、これまでの研究で欠けていた周辺諸国(中国、インドネシア)の遺跡の巡検も行った。東南アジアの初期国家に関する記述はしばしば漢籍で見られ、文字による記述が限られる当時の東南アジアの様相を知る上で重要な資料となっている。中国調査では、東南アジアと交流のあった隋や唐の都城の構造と社会情勢および外交関係について理解するため、北京・洛陽・西安の都城遺跡と博物館を見学した。また、島嶼部のインドネシアにも、歴史時代初期のヒンドゥー教の遺跡が存在し、比較的早い段階からの大陸部との関係性も指摘されている。現地調査では、ジャワ島とカリマンタン島の遺物の様相に関するデータを収集し、大陸部との関係を考察する上での重要な知見が得られた。 2019年度(平成31年度)の調査により、来年度以降の本格的な現地調査に向けた基盤を整えることができた。以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(令和2年度)は、カンボジアを中心とした調査を行う。昨年度は計画を変更し、比較対象となる同時代の周辺遺跡の踏査および博物館における資料調査を行った。そのため、今年度は、カンボジアの資料の調査・分析に本格的に取り組む。 研究対象である先アンコール時代の王都に比定されているサンボー・プレイ・クック遺跡群は、大きく都市区と寺院区に分けられる。これまでの研究では主に都市区の出土遺物を中心に分析を進めてきた。そのため、今後の調査では寺院区の出土資料を観察することで、サンボー・プレイ・クック遺跡群全体の物質文化の特徴を明らかにしていきたい。 本年度は、寺院区の中でも、フランス統治時代から数度にわたり発掘調査が行われてきた一地点における出土遺物の型式学・編年学的研究を行う。また、来年度以降の予備調査として、カンボジア国内における同時代遺跡の踏査も行う予定である。 現地調査は1か月を目安とする。現地調査では、保管遺物の確認と観察表の作成、実測、写真撮影などを中心とした整理作業を行い、遺物の技術=形態的特徴を明らかにする。 整理作業は安全面を考慮して早稲田大学が保有する現地のオフィスで行い、遺跡の踏査も信頼がおける現地の研究者に同行してもらう予定である。
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[Journal Article] Sambor Prei Kuk conservation Project2020
Author(s)
NARUI Itaru, YOKOYAMA Miku, NAKAGAWA Takeshi, TABATA Yukitsugu, KOIWA Masaki, SO Sokuntheary
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Journal Title
Mekong Cultural Diversity Beyond Borders Proceedings for the International Seminar & Symposium on Southeast Asian Cultural Heritage Studies Today March2020
Volume: ―
Pages: 88-93
Open Access / Int'l Joint Research
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