2019 Fiscal Year Annual Research Report
超低損失パワーデバイス実現に向けた窒化ガリウム中の深い準位の生成メカニズムの解明
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19J23296
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鐘ヶ江 一孝 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / 深い準位 / 炭素 / 補償アクセプタ / 低ドーピング制御 / 正孔トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者がこれまでの研究で求めた正孔の光励起レートと光放出レートの比(光イオン化断面積比)を用いて、測定条件における正孔の光励起か光放出のレートと正孔の熱放出レートの比がわかれば、その測定条件での正孔占有率を求めることができる。報告者は、正孔占有率を求めるために、光励起等温過渡容量分光法において、(1)測定温度を変化、(2)光パルス幅を変化、(3)励起光強度を変化させた測定を行い、それぞれレート方程式に基づいた解析により正孔占有率を求める方法を提案した。正孔占有率を補正した真の深いアクセプタ密度は、深いアクセプタの起源の候補の1つである炭素の濃度と良い一致を示した。 上記の3つの方法はいずれも正孔の熱放出過程の容量変化を測定する。深いアクセプタの正孔の熱放出時定数は大きく、測定条件を変えて複数回測定するため、長い測定時間を要する。報告者は、深いアクセプタへ正孔を光励起する短波長光とは別に、測定中に長波長光を照射し、熱放出過程よりも速い光放出過程の容量変化を測定する2色の励起光を用いた光励起等温過渡容量分光法を提案した。測定条件を適切に選ぶことで、深いアクセプタ密度定量の正確性を保ったまま、深いアクセプタ密度を求めるのに要する時間を大幅に短縮することに成功した。この方法は、深いアクセプタ密度の定量に関して、成長条件を変えた試料に対する詳細かつ系統的な研究に有用であるだけでなく、GaNエピウェハ中の深いアクセプタ密度のマッピング測定を可能にするので、エピウェハの品質管理など、工業的にも重要な技術となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年度の目標であるn型GaNショットキー障壁ダイオードを用いたGaN中の深いアクセプタ密度の定量法の確立は、前年度のpn接合ダイオードを用いた光イオン化断面積比の研究から得られた経験や知見を活かすことで、達成された。今後、本定量手法を用いて様々な試料中の深いアクセプタ密度を定量する際、定量の正確さだけでなく、測定に要する時間も重要になる。上記の定量手法は、正孔占有率を求めるために、条件を変えて50回程度、測定する必要があり、また、1回の測定に2時間近く要していた。長い測定時間を短縮するため、変化させる測定条件を工夫することで、必要な測定回数を15回程度に減らし、深いアクセプタの検出を正孔の熱放出過程から光放出過程にすることで、1回の測定時間を3分程度に短縮させた。上記測定条件を適切に選ぶことで、定量の正確さを保ったまま、測定時間を大幅に短縮することに成功した。これにより、多くの試料中の深いアクセプタ密度を正確に定量することができる。また、測定に要する時間が大幅に短縮されたことで、ウェハマッピング測定が可能となり、エピウェハの品質管理などに応用可能となった。実際、2インチ1/4エピウェハ中約200点の深いアクセプタ密度を高速定量したデモンストレーションも行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
n型GaN中の深いアクセプタ密度の精密かつ高速定量手法を用いて、成長手法や成長条件を変えた複数のn型GaN中の深いアクセプタ密度を定量する。深いアクセプタ密度の成長手法や成長条件の依存性を明らかにするとともに、評価した試料中の不純物密度や他の深い準位との相関関係を定量的に明らかにする。以上により、最適な成長条件の探索や、深いアクセプタの起源・生成メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(11 results)