2020 Fiscal Year Annual Research Report
有限要素解析及び拍動循環試験に基づく二尖弁形成術の医工学的評価法確立に関する研究
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19J23308
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高田 淳平 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 大動脈弁二尖弁疾患 / 拍動循環シミュレータ / 血行動態計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度までに構築した任意の交連角度を有する二尖弁疾患モデルを用いて、拍動循環試験を行うことにより二尖弁の交連角度が血行動態に及ぼす影響を明らかにした。 1)二尖弁疾患モデルを組み込み可能な拍動循環シミュレータの開発:シリコーン樹脂で作製した弾性左心室モデル、左心室チャンバー、作製した二尖弁疾患モデル、弾性弓部大動脈モデル、抹消抵抗、前負荷リザーバータンクで一巡する拍動循環シミュレータを構築した。左心室チャンバー下部に取り付けたダイヤフラム要素を空気圧駆動装置により拍動させることにより、体循環を模擬した。二尖弁疾患モデル前後に圧力計測ポートを設けた。そして弁前に超音波流量計を組み込むことにより二尖弁疾患モデルの血行動態を計測した。 2)交連角度が二尖弁疾患の血行動態に及ぼす影響の検討:拍動循環シミュレータと昨年度開発した任意の交連角度を有する二尖弁疾患モデルを用いて、二尖弁疾患の弁形態と血行動態の関係性を明らかにした。交連角度120‐240モデル、140‐220モデル、180‐180モデルの3モデルについて血行動態を計測した。その結果平均流量では大きな差は確認されなかったが、流入量については120‐240モデルが4.9 L/min、140‐220モデルが4.7 L/minであったのに対して、180‐180モデルは4.5 L/minと優位に減少していた。また弁閉鎖時における逆流量を計測した。120‐240モデルでは0.47 L/minであったのに対して、140‐220モデルでは0.37 L/min、180‐180モデルでは0.36 L/minと優位に減少していた。 拍動循環試験の結果、120‐240モデルでは弁が開きやすく流入量が多いが弁が閉じにくく逆流量が多い、180‐180モデルでは弁が開きにくく流入量が少ないが弁が閉じやすく逆流量が少ないという結果が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度は当初の予定よりも内容の充実した研究を進めることが出来た。しかし2020年度はCovid-19に伴う大学への入校制限により2020年度前半は思うように研究を進めることが出来ませんでしたが、スケジュールを早急に立て直すことにより、後半には拍動循環試験を進めることが出来ました。 二尖弁疾患は先天的な症例であり、患者背景の違いから二尖弁疾患の弁機能評価は困難である。申請者の進めている医工学的知見に基づく定量的評価基準の確立は二尖弁疾患の治療戦略につながる。昨年度は1)ブタ摘出血管とウシ摘出心膜を使用した任意の交連角度を有する二尖弁疾患モデル作製法の確立、2)有限要素解析を用いた交連角度の違いが二尖弁疾患に及ぼす影響の検討を行った。本年度は作製したモデルを用いて拍動循環試験を実施した。 当初のスケジュールでは拍動循環試験により得られた医工学的知見をもとに二尖弁疾患に対する治療戦略の確立に向けてディスカッションを重ねていきたいと考えていたが、昨今の状況から2020年度に行うことは困難であった。今後は今までに得た知見をもとに二尖弁疾患に対する形成術式の効果予測を行えるシステムを構築することを期待する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに任意の交連角度を有する二尖弁疾患モデルに対して、有限要素解析および拍動循環試験を実施して以下のことが明らかになった。1)交連角度120-240の場合、弁開口面積が増加して流入量が増加するが、弁接合長さが減少してしまい弁逆流が増加する。そして弁閉鎖時に生じる応力は小さい。 2)交連角度180-180の場合、弁開口面積が低下して流入量は減少するが、弁接合長さが増加して弁逆流が減少する。そして弁閉鎖時に生じる応力が大きい。 本年度は二尖弁疾患に対する形成術として考えられる、大動脈基部形状の矯正を加えることにより交連角度を調整する手法がある。交連角度が120-240に近い場合は、交連角度を120-240に調整したのち、弁接合長さの増加を目的として大動脈弁輪の縫縮を追加する形成術式が考えられる。その場合、大動脈弁輪の縫縮度合により新たに大動脈弁狭窄のリスクが発生するので、縫縮度合の定量的評価を行う。交連角度が180-180に近い場合は 交連角度180-180に調整したのち、弁開口面積増加を目的として、大動脈弁輪の拡張を追加する形成術式が考えられる。その場合m大動脈弁輪 の拡張度合いにより大動脈弁逆流症のリスクが発生するので、拡張度合いの定量的評価を行う。本年度は上述したように、各二尖弁疾患の交連角度により形成術式を決定して、それぞれの手法で新たに発生すると考えられるリスクを解消するために大動脈弁輪を矯正する手法の有効性を、昨年度までに構築した有限要素解析手法および拍動循環シミュレータを用いて定量的に評価する。そして、それぞれのデータをもとに大動脈弁二尖弁疾患形成術の提案を行う。 また提案した手法について医学的知見に長けた臨床医とディスカッションを重ねるとともに国内学会に参加することでより形成術式について意見を求める場を増やしていきたいと考えている。
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Research Products
(5 results)