2020 Fiscal Year Annual Research Report
動的水素結合鎖と一次元電子系が協奏する新規金属錯体の構築
Project/Area Number |
19J23309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堂ノ下 将希 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 水素結合 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸性度が近いプロトンドナーとプロトンアクセプターの間に形成される水素結合においては、ドナー・アクセプター間でのプロトン移動が生じうることが知られている。このような水素結合中の水素ダイナミクスと、電気伝導性や磁性等の電子物性が相関する系は、特異な物性発現が期待され、盛んに研究が行われている。しかしながら、そのような相関を示す系の報告は孤立した水素結合を有する系についてのものが多く、水素結合ネットワークを有する系についての知見は乏しい。水素結合ネットワーク系においては、水素の協同移動等の、孤立した水素結合系とは異なるダイナミクスが期待される。そこで本研究では、ネットワーク系に特有の水素ダイナミクスと電子物性が相関する系の構築およびその相関物性測定を目的とした。この目的の実現のため、高い電気伝導性が報告されている、ジチオカルボキシラト配位子を有するパドルホイール型白金複核錯体に着目した。共役酸・塩基部位を配位子に導入することにより、一次元の電子系と動的水素結合系の共存を目指した。 本年度は、ホスホン酸部位を導入したジチオカルボキシラト配位子を用いて白金錯体の合成に取り組んだ。その結果、結晶性の粉末試料を得、その紫外-可視吸収スペクトルにおいて、原子価間電荷移動とみられる吸収を確認した。これは、プロトン欠陥を伴うキャリア生成を示唆し、目的とする相関物性の実現が期待される。加えて、この錯体の脱プロトン体と有機電子供与分子であるTTFの塩の単結晶試料を得、X線回折実験による構造解析により、水素結合ネットワークの形成を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ホスホン酸部位を導入したジチオカルボキシラト配位子を用いて白金錯体の合成に取り組んだ。詳細な構造・物性評価が可能な単結晶試料は未だ得られていないものの、粉末試料において相関物性の実現が期待される結果を得た。加えて、この白金錯体とTTFとの複合化により単結晶を得た。各要素分子の価数等の電子状態は検討中であるが、水素結合ネットワークの形成は確認されており、キャリアが存在すれば、この系においても相関物性の実現が期待される。 以上からおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた試料について、合成条件の検討を行い、各種測定に充分な量の純良試料を用意する。各種分光測定から、電子状態の評価を行う。電気伝導性、磁性、プロトン伝導性等の物性評価を行い、水素ダイナミクスと電子系の相関を議論する。
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Research Products
(3 results)