2020 Fiscal Year Annual Research Report
STINGを介したI型インターフェロン応答の収束機構の解明
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19J23315
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 笑満里 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 自然免疫 / リソソーム / 細胞内膜輸送 / 小胞体 / ゴルジ体 / COPAシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
私は昨年度までに、活性化後のSTINGがリソソームへと輸送されるにつれて分解され、シグナルが収束していることを見出してきた。そして、この分子機構を明らかにするために、STINGの分解に必要な遺伝子のゲノムワイドスクリーニングを行なってきた。 本年度はスクリーニングの結果への確証を得るため再度スクリーニングを行い、2回の結果を合わせて候補分子を絞り込み、詳細な解析を進めた。さらに、STINGの相互作用タンパク質の解析も行い、異なる解析から共通して同定された因子についてSTING分解への特異性を検証した。超解像度顕微鏡によるSTING分解過程の詳細な観察も進めた。 解析を進める中で、私はCRISPR-Cas9 sgRNAライブラリーを感染させた細胞において、刺激をしていないにもかかわらず、STINGが小胞体局在を失っている細胞が存在するという興味深い現象に気づいた。このことから、STINGの新たなI型インターフェロン応答制御機構として、定常状態における小胞体局在を制御する因子が重要である可能性を考え、この解析も並行して進めた。 STINGの点変異により外来DNA非依存的に活性化する自己炎症性疾患SAVIと類似した臨床所見を示す疾患にCOPAシンドロームが存在する。この疾患はCOPAの点変異が原因であり、COPAが構成因子であるCOPI小胞がゴルジ体から小胞体への逆行性輸送を担うことから、私は自ら発見した現象とCOPAシンドロームとの関連に着目した。 変異型COPAを安定発現した細胞を作成し、STINGの局在を観察した。その結果、これらの細胞においてSTINGが小胞体局在を失っていることが明らかとなった。またこの際、STINGの活性化も見られた。これらの結果から、定常時にSTINGの小胞体局在をCOPI小胞が制御していることが示唆され、COPAシンドローム発症機構の一端も明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は2度目のゲノムワイドスクリーニングを行い、初回の結果と合わせ、より確実な候補因子を絞り込むことができた。また、STING相互作用タンパク質の解析も行い、候補因子選定にあたり有用な結果を得ることができた。今後は、これらの因子のSTING分解への特異性の検証と、超解像度顕微鏡を用いた解析で分子機構の全体像を明らかにする。 並行して進めていたSTINGの新たなI型インターフェロン応答制御機構、STINGとCOPAシンドロームとの関連解析についても、論文発表に至り成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの解析で絞り込まれたSTINGの分解とシグナル収束に関与する候補因子についてSTING分解への特異性の検証を進める。特異性が確認できた因子については欠損マウスの作成を行う。 さらに、これまで行っている超解像度顕微鏡を用いた解析に候補因子の観察も合わせることで、分子機構の全体像を明らかにする。
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