2019 Fiscal Year Annual Research Report
一般化されたローラン双直交多項式に付随する正値性を持つ可積分系とその超離散化
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19J23445
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 克樹 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 離散可積分系 / 超離散可積分系 / 箱玉系 / 数値計算アルゴリズム / 単因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散可積分系は数値計算アルゴリズムやセルオートマトンという情報学において重要なテーマと結びつくことが明らかにされてきた. 例えば有限非周期境界条件を課した離散戸田方程式は, 三重対角行列の固有値計算アルゴリズムであるqd法と同一の漸化式を持っていることが知られている. また離散戸田方程式の極限操作によって得られる超離散戸田方程式は, 可積分なセルオートマトンである箱玉系の時間発展方程式とみなせることが分かっており, 近年注目を集めている. しかし, 超離散可積分系と行列の標準形計算アルゴリズムを結びつける研究はこれまで例がなかった. 研究代表者は, 超離散戸田方程式による二重対角整数行列のSmith標準形計算アルゴリズムを発見した. このアルゴリズムは, 超離散戸田方程式のmin演算と加法をそれぞれgcd演算と乗法に置き換えるという新たなアイデアに基づいており, 計算の各ステップにおける単因子の保存性が, 箱玉系の保存量によって担保されるという従来に無い特徴をもつ. 上記の結果を2019年10月から11月にかけて九州大学で行われた研究集会RIAMでポスター発表を行った. さらに, 上記のアルゴリズムは離散戸田軌道と呼ばれる離散可積分系の族に対して一般化できることが分かった. なお, 離散戸田軌道は離散戸田方程式や離散相対論的戸田方程式の両方を特殊な場合として含む族である. 上記の研究成果は, 本年度の研究計画を進めていくなかで見出された新たな知見であり, 超離散可積分系に基づく行列標準形計算アルゴリズムというこれまで例がないものである. したがって箱玉系と整数行列の数値計算という二つの分野に少なからず影響を与えると考えられるので, 本来の課題に先立って優先的に研究する価値があると判断した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では, 超離散可積分系による整数行列のSmith標準形計算アルゴリズムを定式化し, その収束性の証明を箱玉系の理論を用いて与えた. 研究実績の概要でも述べたように, 当初の研究計画の予測から大きく発展させることができた. この成果によってもたらされた超離散可積分系と行列の標準形計算の関係という視点は, 「新たな離散可積分系の導出およびその超離散化によって得られる箱玉系の解析」という当初の目的の重要性をさらに増すものであると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は得られたアルゴリズムと従来法の性能比較を行い, その結果を論文にまとめしかるべき論文誌に投稿することが目標である. また当初の計画である(-M, 1)-双直交多項式に付随する超離散可積分系や, 超離散ハングリー戸田方程式など超離散系に対して上記のアルゴリズムを拡張できるかどうか検討する.
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Research Products
(2 results)