2020 Fiscal Year Annual Research Report
一般化されたローラン双直交多項式に付随する正値性を持つ可積分系とその超離散化
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19J23445
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 克樹 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 離散可積分系 / 超離散可積分系 / 箱玉系 / 直交関数系 / 基本戸田軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究で, 超離散戸田方程式と整数行列の単因子計算アルゴリズムの関係が明らかになり, さらにその関係が, 基本戸田軌道と呼ばれる可積分系の族についても成り立つことが分かった. 基本戸田軌道とは可積分系の族であり, 特殊な場合として戸田方程式や相対論的戸田方程式を含んでいる. 本年度は当初の目的である, 直交関数系を用いた正値な離散可積分系の導出とその超離散化というテーマに沿って, 基本戸田軌道の非自励離散類似を導出し, また得られた系の解析を行った. まず基本戸田軌道の非自励離散類似を, あるクラスの直交関数系を用いて導出し, 非自励離散基本戸田軌道と名付けた. 非自励離散基本戸田軌道には, 非自励パラメータと呼ばれる空間変数に依存しないパラメータが含まれている. このパラメータは数値計算における原点シフトとみなすことができ, それを適切に用いると, 従属変数の平衡点への収束を加速させることができる. ここでは基本戸田軌道を単に離散化するだけでなく, 将来的な数値計算などへの応用を見据えて, 非自励パラメータを含む形での離散化を行った. また, 非自励離散基本戸田軌道の保存量や行列式を用いた特殊解を, 双直交関数系の理論を用いて与えた. さらに, 非自励離散基本戸田軌道が正値性を持つことを示し, その超離散化によって, 新たな可積分セルオートマトンを得た. ここで得られたセルオートマトンは, 運搬車容量付きの高橋-薩摩の箱玉系や, 離散相対論的戸田方程式から得られる箱玉系などを特殊な場合として含んでいる. したがって今後はそれらの系を, 基本戸田軌道というより広い観点から包括的に考察出来るようになると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究で, 超離散可積分系と整数行列の単因子計算アルゴリズムという関係が明らかになったが, その性能面における評価は今年度へ持ち越されていた. 可積分系を用いた新たな単因子計算法が, 実用的なアルゴリズムへ繋がるかを評価するには, 可積分系以外の分野も含めた様々な専門家とのディスカッションが不可欠であると考えるが, 新型コロナウイルスの蔓延により外部との対話が不十分なままの研究を余儀無くされた. 本研究の当初のテーマに関しては進展があったが, 前年度得られた新たな方向性を十分に検討できなかったことを鑑みて, 進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は本研究課題の当初の計画である, 双直交多項式に付随する離散可積分系の導出とその超離散化を推し進める. 元々の研究計画では, (-M,1)-双直交多項式に付随する超離散可積分系の導出とその解析を予定していたが, 今後はそれを基本戸田軌道を含めたより一般的な形で行う.
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Research Products
(2 results)