2020 Fiscal Year Annual Research Report
ブタ飼育環境におけるプロファージを中心とした薬剤耐性菌出現機構の解明
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19J23516
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
那須川 忠弥 麻布大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 膜小胞 / 薬剤耐性 / グラム陽性菌 / 豚レンサ球菌 / 畜産 / 養豚 |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞は、細菌が死滅および分裂する際に、細菌のDNAやタンパク質等を内包しながら形成されることが知られている。抗菌薬が多く使用される畜産現場では、細菌の薬剤耐性遺伝子を内包する膜小胞が多く産生されると予測される。この膜小胞により細菌へ薬剤耐性遺伝子が伝播していると予想される。また、プロファージとは、宿主細菌のゲノムに取り込まれたファージゲノムである。一部の抗菌薬により、子ファージの産生が誘導される。子ファージは、複製時にはしばしば誤って薬剤耐遺伝子等宿主のDNAの一部を内包し、他の細菌へ伝播する。この現象を形質導入という。以上のように、抗菌薬により大量に産生された膜小胞やファージが薬剤耐性遺伝子を運搬し、薬剤耐性遺伝子を水平伝播する可能性が考えられている。これらの機構を理解することは、薬剤耐性化を防ぐ上で重要であ る。本研究では、豚レンサ球菌をモデルとし、膜小胞やプロファージによる薬剤耐性遺伝子伝播に関して解析を進める。これまで、ブタから臨床分離された37株の膜小胞形成量を定量し、膜小胞高産生株2株を取得した。以降、この2株に着目し、研究を推進している。初年度は、主に「膜小胞やプロファージの産生を促進する抗菌薬の特定」を行った。本研究項目では、豚レンサ球菌に対し臨床現場で使用頻度の高い抗菌薬を使用し、膜小胞・プロファージの産生を亢進する抗菌薬の探索を行った。膜小胞の定量実験は順調に進んでいる。一方、培養上清からのプロファージ分離・定量法を確立できておらず、プロファージの産生を誘導する抗菌薬の探索に関しては、実施できていない。 また、「膜小胞に含まれる薬剤耐性遺伝子の実験的解析」への着手も開始した。本研究項目では、豚レンサ球菌において薬剤耐性遺伝子が膜小胞に内包され、培養上清中に放出される頻度に関して解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス蔓延により、研究が一時的に止まってしまった時期もあったが、2021年の達成目標に向け、研究を順調に遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.膜小胞・ファージの産生を促進する抗菌薬の特定:膜小胞の産生を亢進する抗菌薬の解析は、現在も実施中であり、本年度中に完遂可能である。プロファージの解析に関しては、培養上清からファージ粒子の分離が困難であり、定量ができない問題がある。そのため、引き続きプロファージの定量法に関して情報を収集する。 2.膜小胞・ファージに含まれる薬剤耐性遺伝子の実験的解析:これまで、プラスミド上の薬剤耐性遺伝子よりも染色体上の遺伝子が内包される効率は高く、その効率は20倍ほどであるという結果を得た。今後は、膜小胞の産生を促進する薬剤を作用させた条件下において、プラスミドや染色体上の遺伝子が内包される効率に関して解析を行う予定である。 3.ファージ・膜小胞を介した薬剤耐性遺伝子伝播効率の実験的比較:本研究項目では、薬剤耐性遺伝子を内包した膜小胞・ファージを薬剤感受性株と共培養し、薬剤耐性遺伝子が伝播する効率の検討を行う。精製した薬剤耐性遺伝子を内包する膜小胞と薬剤感受性株の共培養を行い、その伝播効率を検討する予定である。
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