2020 Fiscal Year Annual Research Report
拡張π共役系多環式アレーン金属クラスターの構築と炭素-金属面間配位相互作用の解明
Project/Area Number |
19J23557
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
須川 毅 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | Pd / 多環式芳香族化合物 / 遷移金属錯体 / 多核クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に引き続きペンタセンを架橋配位子に有する多核Pd錯体の合成とその構造解析について研究を行った。溶解性の高いペンタセン誘導体、6,13-ジプロピルペンタセンを用いた場合に無置換ペンタセンでは単離できない錯体の単離が可能か検討を行った。その結果として目的のペンタセン配位子2つが挟み込んだ二核Pdサンドイッチ錯体を合成することはできなかった。しかし、I価Pd二核錯体と0価Pd錯体とを6,13-ジプロピルペンタセン存在下で反応させると、三核および四核Pdサンドイッチ錯体と考えられる化学種が観測された。この錯体はESI-MS測定によってその組成を同定している。三核および四核Pdサンドイッチ錯体は無置換ペンタセンを用いた場合には、観測されておらず置換ペンタセンに特有な化合物と考えられる。2019年度の研究において無置換ペンタセンが挟み込んだ五核Pdサンドイッチ錯体の単離に成功している。これを2020年度の結果と併せると、五核Pdクラスター骨格は一度に組みあがるのではなく、段階的に0価Pdを取り込み増隠している可能性が示唆された。本研究を通して多核Pdクラスターの生成過程について解明することを目的としている。 また、アレーンを架橋配位子とした三次元状にPd原子が集合した多核塊状クラスターの構築についても2020年度は研究を行った。その結果、[2.2]パラシクロファンを配位子としたPdナノクラスターが生成することを明らかにした。この錯体についてはX線結晶構造解析によってその構造を、元素分析によってその組成を明らかにしている。CV測定によって多核遷移金属クラスターに特徴的な多段階の酸化還元挙動を示すことを明らかにした。また、化学酸化還元によるレドックスカップル体についても合成に成功している。今後は、多段階酸化還元挙動を利用した反応の開発にも取り組むことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ペンタセンを架橋配位子に有する多核Pd錯体の合成とその構造解析について研究を行った。溶解性の高いペンタセン誘導体、6,13-ジプロピルペンタセンを用いた場合に無置換ペンタセンでは単離できない錯体の単離が可能か検討を行った。その結果として目的のペンタセン配位子2つが挟み込んだ二核Pdサンドイッチ錯体を合成することはできなかった。しかし、この目的としていた錯体がMS測定においては主要な生成物として観測されていたため、必要以上に実験を重ねてしまった。また、置換ペンタセン合成においてその収率が低く効率よく実験を進めることができなかったと考えている。 塊状遷移金属クラスターの研究については進捗よく研究を推進することができた。実験検討により効率の良い合成反応および精製操作を発見することができたことが要因と考えられる。こちらについては引き続き研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き多環式芳香族化合物を有する多核遷移金属クラスターについて合成を行い、その芳香族配位子ー遷移金属クラスター間の面間配位相互作用の解明を行う。2020年度までの研究でπ共役系の拡張された多環式芳香族化合物を架橋配位子とすることでより多核の遷移金属クラスターを捕捉できることがわかった。その多核遷移金属クラスター骨格が一段階に形成されるか、多段階に形成されるかは金属表面状態との関連からも興味深い。本年度では、多核遷移金属クラスターを捕捉することのできるπ共役系が拡張された多環式芳香族化合物を架橋配位子として用いて遷移金属クラスターの形成過程の解明を行う。 また、単環式芳香族化合物を架橋配位子とした塊状の多核遷移金属クラスターについても研究を行っている。これまでに結晶構造の解析、元素分析による組成の同定を行った。今後はこの塊状多核クラスターを反応場とした触媒反応の開発を進める。
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