2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J23589
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
石丸 華子 京都薬科大学, 京都薬科大学大学院 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルペスウイルス / 細胞内シグナル / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
単純ヘルペスウイルス(HSV)の治療薬として汎用されている核酸誘導体薬は難溶性であり、副作用、薬物耐性株などの問題を有している。本研究の目的は、核酸骨格以外の構造を持ち、既存薬と異なる作用機序を有する抗HSV活性化合物を探索することである。本年度において以下3つの課題を実施した。 「①抗 HSV-1活性を有するプロテアソーム阻害薬MG132の作用機序解析」我々はMG132が抗HSV-1活性を有することを見出し、作用機序解析を行った。MG132はHSV-1感染におけるERKシグナルの抑制をキャンセルすることで抗HSV-1活性を発揮することを明らかにした。次にERKシグナルの上流分子を解析すると、HSV-1感染がRas-GRF2のポリユビキチン化を惹起し、プロテアソームによる分解を誘導した。しかし、HSV-1感染後にMG132処理を行うと、感染によるこれら一連の反応をキャンセルすることを明らかにした。 「②HSV-1感染により惹起されるPTENの翻訳後修飾の機構解析」これまでに、HSV-1感染後Aktシグナルの上流抑制因子であるPTENの翻訳後修飾が異常に亢進していることを発見している。PTENの翻訳後修飾の実態について解明を試みた。免疫沈降法により調製したPTEN分子のリン酸化やユビキチン化修飾を解析したが、同定には至っていない。 「③ブドウの発酵残渣を用いた抗HSV化合物の同定と作用機序解析」これまでに8種類のブドウ品種発酵残渣の抗HSV活性を評価し、ある特定品種が抗HSV活性を有することを見出している。さらに同定した品種残渣中に含まれる抗HSV化合物の単離と構造決定に成功し、それを VV-8と名付けた。本年度は、さらにVV-8が有する抗HSV活性の作用機序解析進め、VV-8 が、ウイルス蛋白質の発現、細胞内ウイルスゲノムの複製、ウイルス放出量を抑制することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題①の成果は Ishimaru, H. et al., MG132 exerts anti-viral activity against HSV-1 by overcoming virus-mediated suppression of the ERK signaling pathway. Sci. Rep. 10, 6671 (2020) として学術誌で発表を行った。課題②, ③は、概ね研究実施計画どおりの進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を受け、下記3つの項目を継続して実施してく。 ①Ras-GRF2のポリユビキチン化を触媒するE3はウイルス性E3のICP0なのか、それとも他の細胞性E3なのかを明らかにする。ICP0によるRas-GRF2のポ リユビキチン化をCo-IP実験で解析するとともに、細胞性E3を同定するためRas-GRF2をベイトとしてセファロースビーズに固定化したアフィニティークロマトグラ フィーによりE3を含む結合タンパク質を精製しペプチドMSフィンガープリント法により解析する。 ②PTENの翻訳後修飾機構を解明するため、継続してPTENを過剰発現させた細胞を用いて、PTENで免疫沈降を行い、各翻訳後修飾を認識する抗体でブロッドを行う。またプロテオームLC-MS/MS解析を用いてHSV感染で惹起されるPTEN部位の同定を試みる。 ③今後の解析は以下3つの実験課題を実行する。 ③-1:VV-8がウイルス前初期遺伝子の転写活性を阻害するか否かレポーターアッセイを用いて解析を行う。③-2:VV-8が標的とする HSV-1感染細胞内のシグナル伝達や転写調節因子を明らかにする。③-3:DARTS法を用いVV-8と結合するタンパク質を同定する。HSV感染・非感染細胞のライゼートにVV-8を添加し、VV-8とVV-8結合タンパク質の複合体を形成させ、プロテアーゼによるタンパク質分解を行う。なお、3つのうち研究の進捗が良好な課題に焦点を当て集中的に研究を実施することで、VV-8の作用機序全貌解明を目指す。
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