2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19J23589
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
石丸 華子 京都薬科大学, 京都薬科大学大学院 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルペスウイルス / 細胞内シグナル / 抗ウイルス化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度において以下2つの課題を実施した。 ①ブドウの発酵残渣を用いた抗HSV-1化合物の同定と作用機序解析 これまでに8種類のブドウ発酵残渣の抗HSV活性を評価し、ピノノワール種に抗HSV-1活性が含まれることを見出している。さらにピノノワール残渣中に含まれる抗HSV-1化合物がVV-8であることを同定した。VV-8が有する抗HSV活性の作用機序解析進め、VV-8が、ウイルス蛋白質の発現、ウイルスゲノムの複製、ウイルス放出量を抑制することを明らかにした。さらに本年度はVV-8がHSV-1のウイルス遺伝子の発現を阻害するか否か解析を行った。その結果、VV-8はウイルスの前初期遺伝子(US-12,UL54)、ウイルス初期遺伝子(UL-23)および、ウイルス後期遺伝子(UL-23,UL-19,UL-48)の発現を抑制することを明らかにした。 ②新規抗HSV化合物の探索 本年度はさらに抗HSV化合物のスクリーニングを進め、Xが抗HSV-1活性を有することを発見した。Xは二本鎖DNAに結合することで、緑色の蛍光を発し、一本鎖DNAに結合すると赤色の蛍光を発する低分子化合物である。本研究では、Xが全光照射により励起されることに着目し下記実験を行った。HSV-1のウイルス液にXを処理し、全光照射した後、プラークアッセイ法により感染性を評価した。その結果、X未処理群及び、X処理後光照射なしの群と比較して、X処理後光照射ありの群で抗ウイルス活性を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの研究課題のうち課題①と課題②ともに、予想通りの進展があった。課題①に関しては、論文投稿に至るまでデータがでそろった。課題②に関しては、抗HSV化合物のスクリーニングによって、Xの新規抗HSV-1化合物同定に至った。これら成果から概ね研究実施計画どおりの進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を受け、下記2つの研究課題を実施する。 ①抗HSV-1活性化合物であるXを用いた作用機序解析 抗HSV活性化合物の探索を行いXが抗HSV-1活性を有することを明らかにしている。次年度は励起されたXがウイルス粒子に直接作用してウイルス感染能を低下させるのか、宿主機能に作用することで抗ウイルス活性を発揮するのか明らかにする。さらに、Xがウイルスもしくは宿主機能のどちらを標的とするのか同定後はさらに詳細な作用機序解析を進め、作用点同定を目指す。 ②抗HSV活性を有するYの新規作用機序の解明 Yは特定のイオンを選択的に通過させるイオノフォアである。既にYが抗HSV-1活性を有することは報告されているが作用機序は不明であった。本研究では、Yがウイルスの吸着、侵入を阻害しないことを明らかにしている。次年度はさらに作用機序解析を進める。HSVは感染成立のためアポトーシス経路や複数の細胞内シグナル伝達を脱制御し、細胞をウイルスにとって好都合な環境に変化させることが知られている。そこで、Yが標的とするシグナル伝達の探索するため、ウエスタンブロット法を用いて解析を行う。さらに、Yはイオノフォアとしてゴルジ体の機能を阻害することが知られている。HSV-1は宿主のゴルジ体機能を用いて糖鎖修飾を受ける。そこで、Yが宿主のゴルジ体機能を阻害することでウイルス産生を低下させるのかゴルジ体を標的とする複数の阻害剤を用いて評価を行う。 本年度は以上2つの課題を遂行することで、新規抗HSV薬開発に貢献する。
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