2019 Fiscal Year Annual Research Report
Computational studies on non-enzymatic stereoinversion mechanisms of amino acid residues in proteins
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19J23595
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
仲吉 朝希 名城大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 非酵素的反応 / 量子化学計算 / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度においては、タンパク質中における立体反転が極めて限定的なアミノ酸残基であるグルタミン酸 (Glu) 残基とスレオニン (Thr) 残基に着目し、その立体反転機構を量子化学計算によって探索し、これらのアミノ酸残基の立体反転がタンパク質中からほとんど観察されていない理由について推定した。Glu残基の立体反転については環状グルタルイミド中間体を経由した機構を、Thr残基の立体反転については主鎖のケト・エノール型互変異性化により進行する機構を想定した。これらの立体反転機構を明らかにする上で生体内の雑多な分子の介在は極めて重要であると考えられるため、これら雑多な分子の果たす役割についても併せて調査した。Glu残基とThr残基の立体反転以外にも、類似または関連する反応としてアスパラギン残基の脱アミド化、N末端Glu残基およびN末端グルタミン残基の分子内環化についても検討を行った。 また、これらの研究と並行して3種のαA-クリスタリンペプチドに対して分子動力学 (MD)シミュレーションを行い、アスパラギン酸 (Asp) 残基の立体反転速度に影響を及ぼす因子について推定した。MDシミュレーションによって得られた各ペプチドの立体構造アンサンブルを詳細に解析した結果、反応点同士の距離だけでなく、ペプチドの柔軟性や反応点の溶媒露出度もAsp残基の立体反転速度を決定する重要な因子であることが推定された。 さらに、Asp残基の立体反転がタンパク質の立体構造にどのような影響を与えるかについても検討するため、既知酵素タンパク質中の一部のアミノ酸残基をD-体に変更してMDシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、実験的に観察された酵素活性を再現する計算結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では当初の予定通り、いくつかのアミノ酸残基の立体反転についての量子化学計算を行った。これらの反応は生体内においてほとんど観察されていない反応であるが、実験に先立って当該反応の機構を明らかにし、当該反応がほとんど観察されていない理由を推定するに至るまで研究が進展している。また、関連する反応についても同様の手法を用いて解析を行い、実験データを再現する反応機構モデルの構築に成功している。また、生体内の雑多な分子を系に含めることによって、これらの分子による触媒機構についても解析することに成功している。さらに、D-アミノ酸残基を含むタンパク質に対してMDシミュレーションを行い、D-アミノ酸残基周辺においてタンパク質の立体構造や活性部位の形状が大きく乱される様子について見出すことができており、実験データを概ね再現するような計算結果を得ることができている。また、計算結果を解析することによって相互作用様式の変化などを見出すことにも成功しており、原子・分子レベルにおける考察に至るまで研究が進展している。以上のことから、当初の予定通り概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き他のアミノ酸残基の立体反転、およびその関連反応の機構を量子化学計算によって検討する。これまでに扱ったアミノ酸残基についても他の分子が触媒として作用する可能性について検討する。また、これまでの研究ではキャップしたアミノ酸をアミノ酸残基のモデルとしていたが、今後は計算対象をジペプチドやトリペプチドに拡張し、隣接残基がアミノ酸残基の立体反転に及ぼす影響について調査を行う。さらに、今後は立体反転によって形成されたD-アミノ酸残基を元のL-アミノ酸残基に修復する酵素に焦点を当てる。具体的な手順としてはMDシミュレーションによって修復酵素の立体構造を精密化し、ドッキングシミュレーションによって修復酵素とD-アミノ酸残基を含むペプチドとの複合体を作成する。この複合体に対してもMDシミュレーションを行うことによって酵素-基質複合体の構造の精密化を行い、得られた構造を解析することによって修復酵素がD-アミノ酸残基を認識する機構を解明する。さらに、L-アミノ酸残基のみを含むペプチドを用いて同様のシミュレーションを行い、修復酵素がL-アミノ酸残基のみを含むペプチドを認識しない(D-アミノ酸残基を含むペプチドのみを特異的に認識する)理由について明らかにする。
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Research Products
(30 results)
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[Presentation] バヌアツ及びケニア人集団におけるCYP2D6遺伝子多型およびデキストロメトルファンO-脱メチル化活性によるバリアント酵素の機能変化解析2019
Author(s)
Evelyn Gutierrez Rico, Aoi Kikuchi, Takahiro Saito, Masaki Kumondai, Eiji Hishinuma, Akira Kaneko, Chim Wai Chan, Jesse Gitaka, Tomoki Nakayoshi, Akifumi Oda, Sakae Saito, Noriyasu Hirasawa, Masahiro Hiratsuka
Organizer
日本薬物動態学会第34年会
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