2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J23627
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松村 護 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 機械刺激誘導性植物免疫 / CAMTA3転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、機械刺激誘導性遺伝子の発現制御機構を明らかにするために、機械刺激誘導性遺伝子群のプロモーター領域に対するモチーフ配列解析を行った。その結果、Ca2+-カルモジュリン結合転写活性化因子であるCAMTAの結合モチーフが有意に検出された。次に、疾病防御応答や低温応答に関与することが報告されているCAMTA3に着目し、転写抑制能は保持しつつCa2+応答性が低下したCAMTA3ΔC変異体を用いて人工雨及びブラシ処理を行うことで、機械刺激誘導性遺伝子の発現量が低下するかをRT-qPCRにより検討した。その結果、人工雨及びブラシ処理において、野生型遺伝子を相補した組換え植物に対して、CAMTA3Δ変異体では機械刺激誘導性遺伝子の発現上昇率が低下した。さらに、病害抵抗性の上昇に対する影響を調査するため、病原菌接種試験を行った結果、CAMTA3Δでは機械刺激誘導性の病害抵抗性が著しく低下した。したがって、CAMTA3は機械刺激誘導性の遺伝子発現を制御することによって、疾病防御応答の活性化に関与すると考えられる。 また、機械刺激誘導性のプライミングに関与する分子機構を明らかにするため、ヌクレオソームの形成に関与するDEK3の破壊株dek3-2及び過剰発現株35S:DEK3-CFP/Col-0に対して、予めブラシで機械刺激を負荷した後にSAを処理することで、SA応答性遺伝子の発現におけるプライミングへの影響を検討した。その結果、dek3-2ではCol-0に対して顕著な差はみられなかった。しかし、35S:DEK3-CFP/Col-0においては機械刺激及びSA未処理の状態でもSA応答性遺伝子の発現量が増加していた。したがって、DEK3を過剰発現させたことにより、SA応答性遺伝子の転写領域を含むDNA領域の開度が上昇し、常に転写されやすい状態が維持されている可能性と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究から、機械刺激誘導性遺伝子群のプロモーター領域において、Ca2+-カルモジュリン結合転写活性化因子であるCAMTAの結合モチーフが有意に検出された。そこで、転写抑制能は保持しつつCa2+応答性が低下したCAMTA3ΔC変異体を用いて人工雨及びブラシ処理を行うことで、機械刺激誘導性遺伝子の発現量が低下するかをRT-qPCRにより検討すると共に、病害抵抗性の上昇に対する影響を調査するため、病原菌接種試験を行った。その結果、人工雨及びブラシ処理において、野生型遺伝子を相補した組換え植物に対して、CAMTA3Δ変異体では機械刺激誘導性遺伝子の発現上昇率が低下し、機械刺激誘導性の病害抵抗性が著しく低下した。したがって、CAMTA3は機械刺激誘導性の遺伝子発現を制御することによって、疾病防御応答の活性化に関与すると考えられる。ここまでの結果を、申請書記載の内容と共にまとめ、現在投稿中である。 また、機械刺激誘導性のプライミングに関与する分子機構を明らかにするため、ヌクレオソームの形成に関与するDEK3の破壊株dek3-2及び過剰発現株35S:DEK3-CFP/Col-0に対して、予めブラシで機械刺激を負荷した後にSAを処理することで、SA応答性遺伝子の発現におけるプライミングへの影響を検討した。その結果、35S:DEK3-CFP/Col-0においては機械刺激及びSA未処理の状態でもSA応答性遺伝子の発現量が増加していた。したがって、DEK3を過剰発現させたことにより、SA応答性遺伝子の転写領域を含むDNA領域の開度が上昇し、常に転写されやすい状態が維持されている可能性と考えられる。現在は、開いたDNA領域を明らかにできるMNase-seqに供試することで、DEK3が直接DNA領域の開口に関与しているのかを明らかにすることを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果より、CAMTA3は機械刺激誘導性の遺伝子発現を制御することによって、機械刺激誘導性の疾病防御応答の活性化に関与すると考えられる。したがって、現在は、CAMTA3が実際に機械刺激誘導性遺伝子のプロモーター上に存在し、転写を制御しているのかを明らかにするために、野生型CAMTA3-GFP組換え植物に対して、mock(機械刺激を負荷しない)、人工雨及びブラシで機械刺激を負荷し、ChIP-seq解析を試みている。しかし、ChIPの固定時の圧力刺激も機械刺激となってしまい、mockとの比較が難しいことが明らかになったため、Ca2+応答性が低下した、つまりプロモーター上で転写抑制状態を維持していると考えられるCAMTA3AV-GFP/camta2camta3を用いることで、健常状態におけるCAMTA3のプロモーター内の結合領域特定を同時に試みている。 また、機械刺激によって誘導される免疫系のプライミングに関与する分子機構の解明においては、DEK3を過剰発現させたことにより、SA応答性遺伝子の転写領域を含むDNA領域の開度が上昇し、常に転写されやすい状態が維持されている可能性と考えられる。そこで、35S:DEK3-CFP/Col-0に対して機械刺激を負荷し、開いたDNA領域を明らかにできるMNase-seqに供試することで、DEK3が直接DNA領域の開口に関与しているのかを明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(4 results)