2020 Fiscal Year Annual Research Report
光レドックス触媒が駆動する窒素ラジカル発生と新規アミノ化反応の開発
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19J23675
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榊原 陽太 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 可視光 / 光レドックス触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は光レドックス触媒と金属触媒を巧みに用いた独自の位置選択的三成分カップリングを開発し、環状テンプレート上において本反応を行うことにより含窒素カーボンナノベルトの精密合成法を達成することである。今年度は、昨年合成法を確立した環状テンプレートのスケールアップを行った。今後は合成したテンプレートを用いて目的の含窒素カーボンナノベルトの精密合成を目指す。 また昨年発見した芳香族直接エステル化と脱炭酸型分岐二量化反応についてのさらなる研究を行った。直接エステル化反応については、フルオランテンを基質として用いた際に反応系に[Ru(bpy)3]2PF6加えることで、フルオランテンの対称なジエステル化体が得られることを見出した。加えて、フルオランテンのモノエステル化体に対して[Ru(bpy)3]2PF6を用いたエステル化を行うことで非対称なフルオランテンのジエステル化体の合成も達成した。 脱炭酸型の二量化反応についてはスイッチングの詳細な機構解明を行った。その結果[Ru(bpy)3]2PF6は基質である超原子価ヨウ素化合物に対し1電子移動を起こしている一方で、4CzIPNはエネルギー移動を促進していることを示唆する結果が得られた。この知見を生かし、開発した反応系を応用したオレフィンとの分岐型カップリング反応を開発した。本反応は1,1-ジアリールエチレンに対し、[Ru(bpy)3]2PF6を用いた際にはモノベンジル化、4CzIPNを用いた際にはジベンジル化が進行する。これらの分岐型の脱炭酸反応を用いて非天然4級アミノ酸やプロテイン二量化誘導化合物の候補分子の合成を行い、本手法の有用性も証明した。 上述した脱炭酸反応の検討中に発見したクロスエステル化反応についてもすでに論文まとめあげて現在投稿中である。本反応を用いることで2種類のカルボン酸からクロス体選択的にエステルを合成できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は環状テンプレート分子であるピラー[5]アレーンにカルボン酸側鎖を導入した分子のスケールアップ合成を達成した。しかしながら、このためテンプレート上で実施する位置選択的な三成分カップリングの開発には至っておらず、研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断した。 その一方で昨年発見した芳香族直接エステル化と脱炭酸型分岐二量化反応の2つの新規反応について精力的に研究をおこなった。芳香族直接エステル化反応に関しては光レドックス触媒の添加が芳香族化合物のジエステル化を促進することを見出し、本手法を利用することで対称及び非対称なフルオランテンのジエステル化体の合成を達成した。 脱炭酸型分岐二量化反応においては、触媒を変えることによる生成物のスイッチングの詳細な機構について調査を行った。その結果[Ru(bpy)3]2PF6は基質である超原子価ヨウ素化合物に対し1電子移動を起こしている一方で、4CzIPNはエネルギー移動を促進していることを示唆する結果が得られた。 この知見を生かし、開発した反応系を応用したオレフィンとの分岐型カップリング反応を開発した。これらの分岐型の脱炭酸反応を用いて非天然4級アミノ酸やプロテイン二量化誘導化合物の候補分子の合成を行うことで、本手法の有用性も証明している。上述した脱炭酸反応の検討中に発見したクロスエステル化反応についてもすでに論文まとめあげて現在投稿中である。本反応を用いることで2種類のカルボン酸からクロス体選択的にエステルを合成できる。また、アリール酢酸骨格を有する医薬品化合物に対し、本反応を行うことで医薬品化合物の誘導体合成も達成した。 開発した3つの新規反応のうち2つは現在論文投稿中であり、もう1つについても概ねまとめ終わっているため、次年度は研究課題へ注力できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在開発しているブロモアレーン類のパラ位選択的アミノ化反応においては目的の生成物が得られる代わりにアミドの二量化体が観測されている。これは反応系中においてアミジルラジカルは問題なく発生しているがメタル化された芳香環との反応性が低いため、アミジルラジカル同士のラジカルーラジカルカップリングが優先してしまっていることを示している。そのため、まずはじめに現在用いているパラジウム触媒を他の遷移金属触媒へと変更してメタル化された芳香環の反応性の向上を試みる。 パラ位選択的アミノ化反応が狙い通り進行した後は、この反応とブロモアレーンのアミドとのクロスカップリング反応を組み合わせた位置選択的三成分カップリ ングの開発に着手する。三成分カップリングを望み通り進行させる鍵は遷移金属触媒からの還元的脱離を厳密に制御することにあると考えている。そのため種々の配位子を検討して中心金属の電子状態をコントロールすることで目的の反応の達成を目指す。 三成分カップリングの開発を達成した場合は、すでに合成が完了している環状テンプレート上において本反応を行うことで含窒素カーボンナノベルトの精密合成を目指す。
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