2020 Fiscal Year Annual Research Report
機能性電子メディエータによる生体触媒の活性化と二酸化炭素のカルボキシ化
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19J23723
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
片桐 毅之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 炭素―炭素結合 / 生体触媒 / 補酵素 / 補因子 / 金属イオン / 可視光 / 金属微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、金属補因子が、リンゴ酸酵素が触媒する二酸化炭素導入反応に与える影響を中心に調べ、その成果を学会および論文として発表した。また、光を駆動力として利用した、天然補酵素NAD(P)H再生系の構築にも取り組んだ。一般にリンゴ酸酵素は補因子である二価の金属イオンが必要とされているが、二酸化炭素導入反応における金属イオンの影響は不明である。2020年度は、リンゴ酸酵素の触媒活性向上を目的とし、NADPHを用い金属イオンの種類や価数が二酸化炭素付加反応に与える影響を調べた。その結果、二価の金属イオンである亜鉛イオンやカルシウムイオン、コバルトイオンなどが酵素反応を抑制した一方、三価の金属イオンであるマグネシウムイオンやアルミニウムイオンを添加した際には見かけのリンゴ酸生成速度が増大することを明らかにした。また、各金属イオン濃度を高くした際には、一般的な補因子である二価のマグネシウムイオンを添加した時には反応が促進されず、アルミニウムイオンを添加した際に反応が促進されたことから、アルミニウムイオンはリンゴ酸酵素が触媒する二酸化炭素付加反応において有用な金属補因子であると言えることが明らかになった。また、リンゴ酸酵素が触媒するリンゴ酸の脱炭酸反応についても同様に金属イオンの添加効果を調べた。これらの成果を基に論文を執筆・投稿し受理・掲載された(研究代表者を単独筆頭著者、受入研究者を責任著者)。さらに可視光を用いたリンゴ酸酵素を触媒とした二酸化炭素導入系に展開できる新たなNAD(P)H再生系を電子供与体・光増感剤・金属微粒子により構築し、現在原著論文として執筆・投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素をカルボキシ基として有機分子に導入、つまり炭素-炭素結合生成を触媒するリンゴ酸酵素と機能性メディエータとの相互作用および二酸化炭素導入過程の反応機構の解明を目的とした研究の一環として、本年度は、NADPHをメディエータとして用い金属イオンの種類や価数が二酸化炭導入反応に与える影響を調べた。その結果、亜鉛イオンやカルシウムイオン、コバルトイオンなどが酵素反応を抑制した一方、マグネシウムイオンやアルミニウムイオンを添加した際には見かけのリンゴ酸生成速度が増大することを初めて明らかにした。2019度および2020年度得られた成果により、DC1申請時に計画した、基質および補因子の機能解明という目標を達成したと考える。また、当該研究成果が論文掲載に至った点から、区分(2)おおむね順調に進展しているが適切であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本研究課題の最終年度あり、これまで得られた成果の学会発表および論文化に取り組む。また、2020年度得られた可視光を用いた新たなNAD(P)H再生系を利用し、リンゴ酸酵素を触媒とした二酸化炭素導入系への展開に取り組む。NAD(P)H再生機構を解明し、NAD(P)H再生効率を高めることにより、リンゴ酸酵素を用いた可視光による二酸化炭素の有機分子への導入を達成する。また、このNAD(P)H再生系を、リンゴ酸酵素以外の二酸化炭素の有機分子への導入を触媒する酸化還元酵素にも適用し、可視光を利用したピルビン酸以外の汎用性の高い基質への二酸化炭素のカルボキシ化の適用を試みる。これらの取り組みにより、可視光を利用する酵素を用いた二酸化炭素のカルボキシ基として導入する技術を確立する。
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Research Products
(8 results)