2020 Fiscal Year Annual Research Report
歯の微細摂食痕の三次元解析から探る、哺乳類特有の咀嚼運動の起源と進化
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19J40003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 泰 東京大学, 総合研究博物館, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロウェア / 給餌実験 / 恐竜 / 食性復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍により予定していた海外出張等ができなかったために繰越を行った。本家研究は哺乳類の咀嚼運動の進化について、歯に残された微細な傷(マイクロウェア)から顎運動の復元を行い推定する事が主目的であった。しかし、海外の標本の型どりが行えず初期の目的を達成するのは難しい状況となった。研究対象を国内でも調査可能に標本に変える事で研究の継続を行った。 また海外の研究者との共同研究により渡航の難しさを補う試みも行った。具体的にはアメリカで飼育されているワニの給餌実験を行い。その脱落歯を必要な法律上の手続きを経て、日本に郵送してもらう事で、国内のみでは不可能な研究を行った。 特に私が継続的に研究を行っている恐竜について、マイクロウェアの分析を行った。岩手県久慈市から産出する白亜紀後期の竜脚類化石について、現生トカゲのマイクロウェアとの比較により食性復元を試みた。これはマイクロウェアの三次元的な解析を恐竜に適用した世界初の成果である。現在も現生の動物に対する給餌実験に基づく食べ物と三次元マイクロウェアの対応についての研究を進めており、マイクロウェアの三次元形状が食べていたものを反映することが、哺乳類、爬虫類を問わず、確かめられつつある。今後は、このような実験を通じて食性復元の精度を高めると共に、数多くの恐竜化石に本手法を適用する事で、マイクロウェアの三次元解析を恐竜の食性復元のディファクトスタンダードにしていくことができるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のために海外調査が遂行できず、哺乳類の咀嚼の進化を探るという初期の目的を達成する事はできなかった。一方で、現生生物の給餌実験などは、共同研究種のおかげで大きく進み、ワニへの給餌実験など、世界で初めての爬虫類のマイクロウェアを調べるための給餌実験が進みつつある。また、同様に研究対象を初期の哺乳類から恐竜等の他の中生代四肢動物に変更する事で、研究の目的はやや変わってしまったものの、絶滅生物の顎運動復元や食性復元という点から見れば、初期の目的どおりに大きな成果を上げる事ができた。 特に日本国内で産出した歯化石に三次元マイクロウェア解析が適用できたのは、断片的な化石の産出が多い、日本の化石にも適用可能な事を示せたという点で良かったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元マイクロウェアの爬虫類への適用を試みているのは、申請者等の他には世界でもう一つの研究グループが存在するのみであり、現在はどちらが先行して研究できるかを競っている状況である。竜脚類恐竜についての初の論文を出版することができ、今後も恐竜の他の分類群へ適用した研究成果を出せる状況がととのいつつある。今後は恐竜の食性復元の標準的な手法として三次元マイクロウェア解析が認識されるように努力を続けていきたい。 また、上記のように本手法は遊離歯の化石などの断片的な化石にも適用可能であり、また手法としては先端的なものであるため、論文化等はしやすい面がある。日本国内で産出するものの、非常に断片的であるために論文化が難しい中生代歯化石や、更新世の哺乳の歯化石に本手法を適用する事で、日本の中生代化石への注目を集める研究や、更新世の環境変動を脊椎動物の食性の変化から推定していくような研究も進めて行きたいと考えている。
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Research Products
(2 results)