2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J40012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 怜子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | クチクラ / クチクラタンパク質 / ショウジョウバエ / 変形 / コルセット |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の発生生物学では、細胞が生み出す力によって組織が変形して適切な体の形がつくられる仕組みが詳細に研究されてきた。だが、生物の体を構成する材料は細胞だけではない。脊椎動物の内骨格や昆虫の外骨格など、多細胞生物の体の形を規定する組織は主に細胞外マトリックス(ECM)から成る。これまで私はショウジョウバエの幼虫期および変態期に、外骨格(クチクラ)自体の変形によって体の形がつくりだされる機構を研究してきた。本年度は幼虫の成長過程で体の形づくりに関与するクチクラタンパク質Cuticular protein 11A (Cpr11A)、および類似した機能を示すクチクラタンパク質Tubby (Tb)について詳細な解析を進めた。その結果、2つのタンパク質は幼虫のクチクラの表面近くに互いに重なり合う層を成していた。クチクラをじかに引っ張り、クチクラの伸びと引っ張り力の関係を調べたところ、Cpr11A機能欠損変異体あるいはTb変異体に比べて、野生型のクチクラの胴囲方向の硬さが有意に大きいことが確かめらた。これは、正常な幼虫のクチクラにはコルセットのように胴囲方向の伸びを抑える作用があること、その作用はCpr11AとTbの働きに依存することを意味している。以上の結果から、ショウジョウバエはクチクラにコルセットの機能を仕込むことで、クチクラを体の支持や保護のためだけではなく体の形づくりにも積極的に利用していると言える。以上の研究成果をとりまとめ、英国科学誌「Communications Biology」に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までにCpr11A機能欠損変異体および古典的な体型異常の変異体であるTubby (Tb)変異体の表現型解析を進め、幼虫の成長に伴ってクチクラが引き伸ばされていく過程でのクチクラの長さと幅の伸び率に異常があることを突き止めていたが、その直接的な仕組みは分かっていなかった。当年度はクチクラを直接引っ張るという実験によってその仕組みを明らかにし、論文発表を行うことができたため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
二つのタンパク質Cpr11AとTbが幼虫クチクラの表面近くに互いに重なり合う層を成していることから、クチクラのこの領域がクチクラの胴囲方向の伸長を物理的に制限するコルセットの役割を果たすと推測されるが、この層構造の形成機構は不明である。今後は各タンパク質に部分的な欠失などの変異を入れて分子の局在への影響を解析するといった手法によって、層構造の形成機構を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)