2021 Fiscal Year Annual Research Report
動物の低温馴化における新規全身型サーキュラー神経回路の光遺伝学解析
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19J40017
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
太田 茜 甲南大学, 理工学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-07-01 – 2023-03-31
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Keywords | 線虫 / C. elegans / 転写因子 / 温度馴化 / 神経回路 / イネキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳神経系における記憶学習や環境応答の神経回路機構の解明は重要なトピックである。本研究では、申請者が確立したC. elegansの温度応答に関わるシンプルな神経回路解析系をつかい個体の温度馴化に関わる分子神経機構を同定することを目指して解析を進めている。当該年度は、前年度までの解析から見つかってきた、ホ乳類から線虫まで記憶に関わることが知られている転写因子に異常を持つ線虫C. elegans変異体が、野生株に比べ新しい温度への馴化に時間がかかる現象をもとに、この現象に関わる神経回路の生理的機構を解き明かすために、光遺伝学的をもちいて解析を行った。これまでに同定した温度馴化に関わる神経回路上で機能する神経伝達物質の同定をすすめた。具体的には、温度馴化に関わる神経回路上で発現している複数のニューロペプチド遺伝子について温度馴化への関与を詳細に解析した。神経伝達物質経路のノックアウト変異体を使うことに加え、細胞特異的なRNAiを行った。さらに、温度受容 ニューロンとその下流の介在ニューロンの情報伝達に関わる可能性が示唆されたギャップ結合構成タンパク質イネキシン(INX)の変異体を用いて、温度馴化テストを行ない、複数のINX遺伝子が温度馴化に関わることが見つかった。それらの結果をふまえて、温度馴化に関わる感覚および介在ニューロンで発現しているINX遺伝子について、細胞特異的RNAiをおこない、温度馴化におけるINXの機能細胞を同定を試みたが、既知の温度馴化回路への関与は少なかった。線虫が飼育 温度依存的に低温(2度)で生存できたり死滅したりするため、なぜ低温(2度)48時間程度で死に至るのかについての解析を生化学的に進めた。また、薬理学的解析も取り入れ低温馴化解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに確立したC. elegansの温度応答に関わるシンプルな神経回路解析系をつかい、温度記憶を伴う温度馴化現象を分子生物学や光技術を組合せ多面的に明らかにするために、頭部温度受容ニューロンが尻尾の介在ニューロンに接続し、それが再度頭部のハブ介在ニューロンに情報フィードバックを行うという、全身を周回する新規の神経回路を使った解析を行い、当該年度は神経伝達物質の同定を目指し、それに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに構築した温度馴化の神経回路モデルをもとに、カルシウムイメージングによる神経回路活動の測定を進め、構築した神経回路モデルを検証する。さらに、光応答性チャネルを用いて、神経回路活動を操作し、作製した神経回路モデルを検証する。前年度までのRNA-seq解析から同定された、温度刺激に応じて発現変動する分子や発現変動が起きない分子に関して、全身性の神経回路が影響を与える組織を同定することで、低温馴化のアウトプットを調べる。
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Research Products
(19 results)