2019 Fiscal Year Annual Research Report
同位体分析および行動観察による離乳前後の野生チンパンジーの食性の解明
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19J40031
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
松本 卓也 総合地球環境学研究所, 大学共同利用機関法人人間文化研究機構 総合地球環境学研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-01-06 – 2023-03-31
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Keywords | 母子関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、離乳前後のチンパンジーにおける実質授乳量の推移を、体毛の安定同位体分析を用いて月単位で解明する。さらに、乳首接触の左右差の発達変化との関連性を分析することで、実質授乳量を評価する新たな行動指標を策定する。また、定性的に明らかになっている子独自の食物(オトナとの食性の差)が、子の栄養的離乳にどの程度寄与しているかを、採食時間と栄養分析によって定量的に解明する。また、オトナとの伴食(間接的な食物分配)と単独採食を比較することで、子の採食戦略を解明する。これらの研究成果を統合することで、ヒト特有とされる「離乳時期の早期化」や「Childhood 期」の進化的基盤を明らかにし、ヒトの生活史の特徴について霊長類学の見地から再検討することを目的とする。 2020年1月に資料収集および野外調査に必要な物品購入を行った。1月26日から3月21日にかけてタンザニア連合共和国・マハレ山塊国立公園においてフィールドワークを行い、チンパンジーの子の行動データを収集した。観察対象の子は、特定の個体を随時発見・追跡できるわけではないため、発見できた個体の中から、観察時間のばらつきが出ないように追跡対象を選んだ。具体的には、母子の採食した品目・採食時間・母親の伴食の有無、および採食開時の他個体とのやりとり(禁止・教育行動の有無)を記録した。また、乳首接触時間を乳首の左右も含めて記録した。同時に、母子の体毛と食物サンプルを収集し持ち帰るための国内外の手続きを進めた。帰国後、行動観察によって得られたデータをパソコンに入力し、データベースソフトを利用して集計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度松本は、タンザニア連合共和国・マハレ山塊国立公園において野生チンパンジーの研究を行うための準備を進め、採用期間のほとんどをフィールドワークに費やした。その結果、チンパンジーが見つかりにくい時期にもかかわらず、約150時間の直接観察を行うことに成功した。行動観察による離乳前後の野生チンパンジーの食性を解明するうえで、貴重なデータを収集できたと評価できる。一方で、ラボワークのためのチンパンジーの体毛および食物サンプルを持ち帰ることができなかった。その理由は、タンザニア政府がサンプル輸送に係る新たな手続きを導入したためである。サンプルを持ち帰るには至らなかったものの、松本はサンプル輸送のための国内外の手続きを今回の渡航で完遂させた。次年度以降において、野生チンパンジーのサンプル収集および輸送が可能になると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響で、国外の渡航及び実験が4月下旬の段階で不可能となっている。今後、これらをいつ再開できるかの見通しは経っていない。年度内に再開できない可能性も考慮して、2019年度に収集したデータの分析および先行研究の網羅を進める。
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