2020 Fiscal Year Annual Research Report
微生物の全ゲノム解析を実現する「DNA非切断型」Target-AID技術の拡張
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19J40073
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂野 聡美 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 遺伝子工学 / ゲノム編集 / CRISPR / 合成生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DNA を切らずにゲノム編集を行うTarget-AID 技術を、次世代の合成生物学、遺伝子工学を飛躍的に発展させる基盤技術として確立することを目的とする。具体的には、塩基置換融合酵素dCas9-PmCDA1 と配列認識モジュールCRISPR-gRNA を原核生物に導入するだけで、複数の標的DNA の同時編集を簡便かつ高確率に行うよう、[基本技術の構築][技術の拡張]を行い、[応用・実用化]に向けて研究を進める。 現在は、大腸菌ゲノムの標的1遺伝子内に、ある程度効率よく変異を導入することが可能となっている。しかしながら、複数の標的DNA への同時塩基置換を、簡便化かつ高効率化することが課題である。 そこで、本課題2年目では、まず[基本技術の構築]として、複数遺伝子への同時塩基置換を効率よく行うためのプラスミド構築法の検討を行った。様々な方法を試した結果、一つのプラスミドに3遺伝子を構築する方法が最適であることがわかった。今後は、プラスミドに頼らない遺伝子編集法の構築を検討する必要がある。 次に、[技術の拡張]に向けて、標的1遺伝子変異導入を用いた、薬剤耐性菌の変異個所探索法の検討を行った。その結果、薬剤耐性に関わる既知の遺伝子以外の配列が複数同定された。現在その配列情報に関してさらなる追加実験を行っている。今後は、培養条件の再検討やスクリーニング法の改良などを行い、Target-AIDを用いた新規遺伝子スクリーニング法の構築を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナによる自粛生活により、しばらく出勤することができず、研究室で行う実験がトータルで半年近く滞ってしまったため。 複数遺伝子へのゲノム編集をより効率の良いものにするための、プラスミド構築について改良を試みた。代謝に関わる遺伝子 (pta, ldhA, poxB, pgi, adhE) を標的としたgRNAを設計し、2x~5xの複数標的sgRNAプラスミドの作製を試みた。その結果、3遺伝子までは構築できたが、それ以上は構築することができなかった。以前、combi-OGAB法を用いた6遺伝子sgRNAプラスミドの作製の際も、sgRNAのリピート配列の影響などにより構築にたいへん時間がかかったことから、3遺伝子sgRNAを乗せたプラスミドを基本とした変異導入法が現時点での最適な方法ではないかと考えられた。 次に、CRISPR-gRNAを導入した大腸菌に薬剤などの選択圧をかけ、スクリーニングを行うことで表現型に関わる新たな変異個所を探索することができるかどうか、条件検討と予備実験を行った。Rifampicin 耐性関連遺伝子rpoB、fluoroquinolone耐性関連遺伝子gyrAを選定し、マイクロプレートを用いたMIC assayにより各薬剤の最適濃度を決定した。次に、標的配列20塩基をNとして設計したプライマーを用いてCRISPR-gRNAを構築し、大腸菌に導入した。各薬剤の選択圧下における大腸菌を集菌し、プラスミド抽出後、gRNA部分を次世代シーケンサーで配列解読した。その結果、rif耐性大腸菌からはrpoB以外の特異配列が7つ、nalidixic acid耐性大腸菌からはgyrA以外の特異配列が5つ、それぞれ同定された。
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Strategy for Future Research Activity |
[技術の構築と拡張] combi-OGAB法によるプラスミド構築は、理論上10種類以上もの遺伝子を並べて一つのプラスミドに構築することが可能であるのだが、実際のところ6遺伝子でさえもsgRNAのリピート配列の影響などにより構築にたいへん時間がかかる。さらには、様々な方法を用いた従来のプラスミド構築でも、最大3遺伝子までしか構築できない。今後は、大腸菌にgRNAを直接挿入する方法を検討し、他の原核生物などにも適用可能な技術として拡張を試みる。 [応用・実用化] 本研究で構築したゲノム編集技術を実用化するために、有用物質生産株の作出を検討する。例えば、有用物質を効率よく生産する in silico予測に基づいた多重遺伝子破壊大腸菌株を作製し、その表現型を適宜、GC, HPLC 等を用いて検証したい。
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