2019 Fiscal Year Annual Research Report
Collective Memories of Jewish People and Ladino in the Former Ottoman Empire
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19J40107
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨志田 聡子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ラディノ語(ジュデズモ、ユダヤ・スペイン語) / 地中海地域 / イスラエル / ユダヤ人 / ディアスポラ / セファルディ / 集合的記憶 / 語りにくさ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、夏期にテッサロニキ、イスタンブル、冬期にエルサレム、テルアビブ、春期に米国において聞き取り調査や参与観察を行い、以下の成果が得られた。 (1) ラディノ語の言語学習活動を参与観察し、これをきっかけに、今後もこの言語を当事者たちと学ぶことができるという見通しが立った。大学やユダヤ系の団体などでの学習活動が確認された。これまで報告者はラディノ語の学習活動への参加は、絶対数の少なさや、報告者がもともと部外者であったことなどから容易ではないと感じていた。報告者の研究の目的や熱意、参与観察したいという希望を当事者たちに伝え続けたこと、それとは別に(クラスの創設など)外的な要因が整ったことにより、参与観察が可能になったと考えている。 (2) ユダヤ人の言語としては非常に盛んに学習されているイディッシュ語のオンライン学習活動について鴨志田(2020)にまとめた。 (3) 大規模なホロコーストが起こったテッサロニキと、そうでなかったイスタンブルの現地調査を実施した。テッサロニキでは、ラディノ語や現地のユダヤ人の歴史や現状について詳しいR. モルホ教授から、詳細を聞くことができた。近接する2つの都市であるが、ユダヤ人の歴史の継承に決定的な違いがあることが明らかになった。また欧州連合の外と内では、現在のユダヤ人の置かれた環境に大きな違いがあることが明らかになった。 (4) イスラエルや米国、オンライン会議(米国のユダヤ系団体主催)などにおいて、イディッシュ語話者、ヘブライ語話者など、非ラディノ語話者であるユダヤ人に向けて本研究の経過を発表した。報告者の研究についての理解が得られることで、非ラディノ語話者たちにおけるラディノ語への潜在的な興味や知識を引き出し、議論を深められると考えている。非ラディノ語話者にも聞き取り調査を実施することで、ラディノ語話者が置かれた状況が多角的に見ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1) 今年度の現地調査や資料調査によって、本研究を遂行するための基盤づくりができたため。 (2) 今年度の終わりからは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止対策で海外調査や研究報告が複数キャンセルになったが、その一方で資料やオンラインで当初の計画を超える調査をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究は以下の通り推進する計画である。 (1)【現地調査の実施】夏期から秋期にかけて米国(シアトル、ロサンゼルス、ニューヨーク)、スペイン(マドリード、バルセロナ)、冬期にイスラエル(エルサレム、テルアビブ)、トルコ(イスタンブル、イズミル)、ギリシャ(テッサロニキ)における現地調査を計画している。夏期、秋期に実施できない場合は春期に実施する。 (2)【オンラインでの言語学習活動の参与観察】2020年のはじめから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止対策が行われるようになり、ユダヤ系の組織の文化的活動や宗教的な集会がオンラインで非常に活発化する様子が観察された。この流れの中でラディノ語やイディッシュ語の話者や学習者の間でもオンライン学習が活発化している。本研究の目的の一つである言語学習活動の参与観察をオンラインで行う。 (3) 【資料調査】ラディノ語での個人出版Aki Yerushalayim、ラディノ語話者が綴った集合的記憶(一部は書籍化され入手済み)を調査分析する。時代や地域によって彼らの自分たち自身についての「語り」がどのように変化したのかを調べ、同時代のヘブライ語の新聞雑誌などにおけるラディノ語についての記述と比較する。 (4) 以上について分析結果をucLADINO、XXI Congreso de Estudios Sefardiesなどで報告する。ラディノ語話者の集合的記憶の一部を日本語に翻訳し、解説もつけて学会誌などで発表する。
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[Book] アンチ2019
Author(s)
ヨナタン・ヤヴィン、鴨志田 聡子
Total Pages
294
Publisher
岩波書店
ISBN
9784001164169
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