2019 Fiscal Year Annual Research Report
正常細胞と変異細胞の相互認識に関する微細構造学的解析
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19J40132
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
釜崎 とも子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | Ras変異細胞 / BARファミリータンパク質 / 電子顕微鏡 / 超解像顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常-変異細胞間相互作用の最初期の反応は、変異細胞と隣接する正常細胞の境界を構成する細胞膜を介して行われると予想される。上皮細胞層に生じた変異細胞における自律的なシグナル伝達の変化が、変異細胞と隣接する正常細胞の境界を構成する細胞膜や細胞膜タンパク質に生理的・物理的影響を及ぼすことで、変異細胞と隣接する正常細胞それぞれの細胞非自律的なシグナルが活性化されることが想定される。これまでに私は、Ras変異細胞の自律的な形態制御を司り、かつ正常細胞との相互作用に重要な因子としてFBP17およびSRGAP2を同定した。 今年度は、正常細胞と変異細胞の境界を構成する細胞膜を介して起こる現象をさらに明らかにするため、正常細胞および変異細胞の単独培養もしくは混合培養を用い、それらの電子顕微鏡像を基にして、細胞膜の波打ち度合いおよび細胞突起の頻度を定量した。その結果、単独培養と比較して混合培養においては、正常細胞と変異細胞の境界を構成する正常細胞側の細胞膜で、細胞膜の波打ち度合いおよび細胞突起の頻度が上昇することが明らかになった。現在、その分子メカニズムに迫るため、BARタンパク質を始めとする候補について探索を進めている。 さらに、変異細胞の自律的変化を隣接する正常細胞が受容する際、細胞間接着部位を構成する細胞膜が示す動態を明らかにするため、細胞膜を蛍光ラベルした変異細胞もしくは正常細胞を用いて、変異細胞と正常細胞の境界について超解像ライブイメージングを試みた。予備的解析から、細胞間接着部位での細胞突起のダイナミックな伸縮の様子や、多色観察の条件設定を行うことに成功した。今後、変異細胞と隣接する正常細胞の細胞膜を介したクロストークを可視化できることが予想され、変異細胞側でのFBP17およびSRGAP2が隣接する正常細胞側の細胞膜動態におよぼす影響が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子顕微鏡解析から、正常細胞と変異細胞の相互作用の過程では、変異細胞のみならず、それを囲む正常細胞においても細胞膜構造に変化が見られることが明らかになった。この結果は、変異-正常細胞間で特異的に起こる、細胞膜の形態制御メカニズムが存在することを示唆していることから、次年度以降、さらに研究を発展させるための準備も十分に出来ていると考えられる。また、変異細胞と正常細胞の境界を構成する細胞膜の動態を、超解像ライブイメージングすることにも成功している。今年度に確立されたこの手法を用いて、正常細胞と変異細胞の境界における、細胞膜を介したクロストークの過程が詳細に解明されて行くことが大いに期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、変異細胞と正常細胞の境界を構成する細胞膜の動態を、超解像ライブイメージングするための実験条件を設定することに成功した。今後は、この手法を用いてさらに、変異細胞の自律的変化を隣接する正常細胞が受容する際、細胞間接着部位を構成する細胞膜が示す動態を可視化する。細胞膜を蛍光ラベルした変異細胞もしくは正常細胞を用いた解析を行う予定である。
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Research Products
(3 results)