2019 Fiscal Year Annual Research Report
ザンジバルの漁村における干物生産者の組織化に関する研究:農業協同組合との比較から
Project/Area Number |
19J40164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 麻里子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ザンジバル / ダガー加工産業 / 資源保全 / 生産者組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タンザニア連合共和国の島嶼地域ザンジバルにおけるダガー(カタクチイワシ)漁とその干物への加工産業において、干物を購入する商人に比べて弱い立場にある生産者の利益を守るためにどのような政策が求められているかを明らかにすることである。農山漁村の商品生産者にとって重要な役割を果たすとされる生産者組織だが、ザンジバルの漁村においては、ダガー漁、加工産業に従事する人々で組織される生産者組織は存在しない。そのため、地域の生産者は乾燥ダガーの売買において価格交渉力が弱く、買い付け商人に買い叩かれる現状がある。現地で必要性が高まる生産者組織に求められる役割を明らかにすることが本研究の目的である。 当該年度は3度の現地調査を実施し、調査地におけるダガー漁および加工産業の現状について情報収集を行った。現地調査の結果、2019年1月にタンザニア本土政府による実質的ダガー漁禁漁措置が取られたこと、それによりタンザニア本土からザンジバルにダガー産業従事者が多数移動してきたこと、ザンジバル側でダガーの水揚げが急増したことが確認できた。ザンジバルの漁村では急激なダガー水揚量の増加と、ダガー産業従事者の人数増加により、①漁村における日用品や食料品などの需要増加による副次的な経済活動の活発化、②水揚量急増による人手不足、③加工前にダガーが傷むことによる干物の品質低下、などの問題が起こっていた。 ザンジバルとタンザニア本土では、司法・立法・行政組織が異なり、本土で使用禁止されたダガー漁用の漁網がザンジバルでは継続して使用可能なこと、乾燥ダガーの売買時における課税システムが異なっており本土の方が税金が高いこと、などからザンジバル側でダガー産業が活発化していることがわかった。ダガー産業が地域経済に与える影響は大きく、従事者の増加により生産者組織に求められる役割も大きくなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、複数回の現地調査により、研究対象であるザンジバルのダガー産業に新たな問題が生じていることや、それによる地域住民の生計活動への影響などを明らかにすることができた。これら現地調査から得た情報について、国内学会における口頭発表および学会誌への論文投稿を行うことができた。 2020年2月にも現地調査を実施し、現地の最新事情を確認したが、その後世界的な新型コロナウイルスの流行により、現地調査が困難な事態が生じている。しかし、当該年度においては、必要な現地調査を実施でき、情報収集も行うことができたので、研究の実施状況はおおむね順調であると言える。最新の現地調査の知見について、データ分析および学術誌への公共準備を適宜進めている。世界的な国をまたいだ移動制限など、研究の計画段階には予期していなかった事態が生じているが、現地インフォーマントとはSNSなどを通じた情報交換手段が確立されているため、今後も現地調査以外の方法で調査を継続できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の初年度においては、十分な現地調査を行うことができた。ただ、世界的な新型コロナウイルスの流行と移動制限、治療薬やワクチンが存在しない現状、途上国におけるフィールドワークが困難な事態が生じている。今後は、世界的な感染症流行の状況や調査対象地域の感染症の状況について十分な情報収集を行いながら、SNSを通じて現地事情を収集するなど、新たな研究手法を取り入れながら研究課題の遂行に向けて対策を講じる予定である。 また、新型コロナウイルスの流行そのものが、調査対象であるダガー漁や加工産業に直接・間接に影響を及ぼしている可能性も高く、その事情についても情報収集を強化する予定である。現地のカウンターパート研究者や行政機関の報告書等についても適宜収集し、情報分析を行う予定である。
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