2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J40198
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
梶田 美穂子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | オルガノイド / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
がん免疫の分野では、「がんの免疫による除去」「免疫とがんの平衡状態」「がんの免疫からの回避」の3つの段階を経て、最終的にはがんが免疫系から逃れて顕在化していくという「がんの免疫編集」の考え方が広く受け入れられている。免疫チェックポイント阻害剤の登場により、悪性腫瘍が免疫系から逃れるシステムについては多くの知見が蓄積し、臨床にも応用されているが、そのターゲットはすでに多数の変異が蓄積した悪性腫瘍であり、その時点からの治療には莫大な医療費がかかり、患者の精神的・身体的負担も大きい。さらに近年では、がんはごく初期の段階ですでに転移が始まっているという報告が相次いでおり、より早期のがん(前がん)細胞捕捉システムの構築が必須である。一方、免疫系によってがんが積極的に排除される最初の段階については不明な点が多く、特に「がん免疫がどのように始動するのか?」という視点での研究はほとんど行われていない。本研究では、がんになる前の変異細胞の段階における免疫応答をFACSや免疫組織染色で解析すると共に、がん免疫が始動するタイミングをタイムラプスで視覚的に追跡することを目指している。具体的には乳腺オルガノイドに各種がん遺伝子・がん抑制遺伝子のドミナントネガティブ変異体を導入した変異オルガノイドを作製し、これらのオルガノイドに対する免疫反応を免疫組織染色やFACSにて解析している。さらにがん免疫の始動を可視化するために、CX3CR1-GFPマウスから乳腺組織を単離し、レンチウイルスによってがん遺伝子等を導入して、組織常在性マクロファージ(CX3CR1-GFP+)と変異細胞(tdtomato+)との相互作用を視覚的に追跡できるシステムを構築した。これらのアプローチを通じて、がん免疫の始動メカニズムを解明し、免疫システムによる初期がん排除を強化できるような知見の獲得を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずがん免疫始動システムの可視化のため、乳腺オルガノイドにレンチウイルスでがん遺伝子等を導入するが、組織常在性マクロファージを維持したままウイルスによって遺伝子導入した例が他になく、改善を重ねる必要があり、システムの構築に時間がかかった。また、乳腺オルガノイドを撮影するタイムラプス顕微鏡が頻繁に故障し、そのメンテナンスに時間がかかり、実験も何度もキャンセルとなった。以上の理由のため、当初の予定より遅れているが、レンチウイルスのシステムは確立した。また、ウイルス感染を介さずに変異細胞と組織常在性マクロファージとの相互作用の可視化が可能になるLgr5-creERT2: LSL-tomato: APCfl/fl:CX3CR1-GFP マウスの作製も完了し、タイムラプスや免疫染色で解析を始めている。変異オルガノイドを乳腺に移植する系でも興味深い結果が出始めており、今後は研究が発展することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は2019年度の研究を継続するとともに、さらに多様な変異オルガノイドに対する免疫反応を解析する。現在樹立しているオルガノイドに加え、Her2、HRas G12V、 p53 R270H、Twistなどを発現する乳腺オルガノイドを作製する。これらの変異細胞に対する免疫反応をFACSや組織染色で解析し、各種変異細胞に対する免疫反応を比較・解析する。またレンチウイルスシステムを用いてCX3CR1-GFP マウスの乳腺オルガノイドに様々ながん遺伝子・がん抑制遺伝子のドミナントネガティブ変異体を導入し、組織常在性マクロファージと変異細胞との相互作用をタイムラプスや免疫染色などで解析する。以上の研究を通じて、がん免疫の初動を担う免疫細胞の同定、さらにはがん免疫の始動を効率よく誘導する分子メカニズムなどを解明していく。
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