2019 Fiscal Year Annual Research Report
入国管理をめぐる外国籍移住女性への統治実践の研究―日比の在留資格「興行」言説から
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19J40210
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 聖良 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 入国管理 / 在留資格「興行」 / フィリピン / 日本 / エンターティナー / ジェンダー / 国際移住労働 / 移民女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に以下の資料収集およびその考察を基にした研究成果(論文掲載及び学会発表を行った)。 一点目に、財団法人入管協会発行『国際人流』等を一次資料として文献調査を行い、戦後の入管行政において在留資格「興行」への認識や入管体制における位置づけの変遷を考察した。その研究成果は、社会理論動態研究所発行『理論と動態』第12号「入国管理行政における在留資格『興行』の言説編成―1980・1990年代の『国際人流』を中心に」という査読論文として公表されている。また、シンポジウム講演(シンポジウム「女性の移住と人身取引に関する日韓シンポジウム:ホスト社会から見た課題」)でも研究成果の一部を発信した。二点目に、1980年代からフィリピン人エンターティナーを日本が受け入れた背景を把握するため、日本の「興行」や遊興歓楽業界に関する歴史をはじめとした先行研究の収集および整理を行った。三点目に、エンターティナーとしての日本への渡航について、フィリピン社会ではどのように議論されてきたのかを明らかにするため、本年度はフィリピンの日本人コミュニティーを対象に発行されてきた邦字日刊新聞「まにら新聞」とコミュニティー新聞「セブ通信」を対象に、在留資格「興行」やフィリピン人移民女性について言及されている記事を中心に収集し、データベース化を行った。四点目に、エンターティナーとしての渡航経験があるフィリピン女性とその子どもを長年支援してきたNGOに注目し、NGOが発行してきたニューズレターのデータベース化および両団体が展開する言説の変遷について考察をすすめた。この分析については、移民政策学会や国際フェミニスト経済学会の学会報告で研究成果として発表し、国際ジェンダー学会誌に、NGOの機関紙からみえる支援活動の歴史を資料報告として投稿した(現在、閲読中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画通りに研究を遂行することができた。本年度に予定していた文献・資料収集をおおむね実行でき、かつその資料を用いて論文(2本、うち1本掲載済み)と学会報告(国内1本、海外1本)やシンポジウムでの講演という形で研究成果を公表することができたことから、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はフィリピンでの資料収集や国内外でのインタビュー調査の実施を予定していたが、コロナウィルスの影響によって、一部の計画を調整せざるを得ないと考える。インタビュー調査関連については、調査対象者の意向を酌みつつ、実施可能な方法(オンラインインタビュー等)を模索していきたい。 それと同時に、現時点で収集した資料のデータベース化とその考察を精力的に実施したい。すでに収集した邦字日刊新聞「まにら新聞」とコミュニティー新聞「セブ通信」、フィリピンでの主要新聞記事で掲載された、フィリピン人エンターティナーや日本の在留資格「興行」に関する記事の記事見出し・内容のエクセル入力を行い、フィリピンにおける在留資格「興行」をめぐる議論を把握したい。特に、フィリピンのマスメディアにおいてエンターティナーとして渡航した女性たちがどのように語られてきたのかを、日本メディアとの比較を通じて考察したい。また、引き続き、日比のNGOの機関紙のデータベース化および在留資格「興行」に関する政策転換をめぐるNGOの動向や言説変遷について考察をすすめていく。その研究成果は日本移民政策学会等の学会誌にて論文として公表する予定である。
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