2019 Fiscal Year Annual Research Report
分光学的手法による先カンブリア時代微化石分類のための有機分子の探索
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19J40214
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
伊規須 素子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-01-06 – 2023-03-31
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Keywords | 先カンブリア時代 / 微化石 / 顕微赤外分光法 / 顕微ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,形態的特徴と化学的特徴を合わせることで,先カンブリア時代微化石の起源生物に制約を与える新しい指標を得ることを目指す。今年度は1月に交付内定があり,研究期間が1月から3月と限られていたため,分析試料の選定を主な目標とした。 具体的な実施内容は次の通りである。特別研究員採用以前に取得した約5.8億年前の微化石試料(アクリターク)の光学顕微鏡記載と,顕微ラマン分光・顕微赤外分光分析のデータをまとめた。そして,次年度に大型放射光施設で行う予定の顕微赤外分光分析を用いた再測定に適した微化石とその部位を選定した。 顕微ラマン分光分析結果から,測定したアクリタークは突起構造の有無に関わらず,いずれも同程度の熟成度を有することが明らかになった。また,アクリターク1個体中で,外膜構造および突起構造等の部位に関わらず,同程度の熟成度を有することが分かった。アクリタークと同一薄片内に分布する不定形炭質物も同程度の熟成度を示した。顕微赤外分光分析結果からは,前年度までに,突起構造の有無に関わらず,外膜はいずれも芳香族C-H結合を含むこと,内部構造を有するアクリタークでは,内部構造が主に脂肪族C-H結合から成るものと,芳香族C-H結合から成るものの2種類があることが分かっている。これらの結果は,顕微赤外分光分析で得られた脂肪族C-H結合と芳香族C-H結合の分布が起源物質の違いを反映することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初に設定した目標をおおむね達成したので,順調に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,選定した微化石の局所分析を行う。顕微ラマン分光分析では,微化石が炭質物から成ることを確認し,その3次元分布を把握する。次に,放射光施設において顕微赤外分光分析を行い,脂肪族CH結合や他の極性結合が存在する部位を絞り込む。また,FIB-SEMを用いチャート薄片から厚さ100nm程度の切片を作成するために,薄片から目的の部位を確実に特定する方法を検討する
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