2019 Fiscal Year Annual Research Report
高濃度ヨウ素含有排水処理施設内の活性汚泥の菌叢解析とヨウ素含有化合物分解菌の探索
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19J40243
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森田(松下) 真由美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 廃水処理 / 工場廃水 / 活性汚泥 / 網羅的菌叢解析 / 水質分析 / ヨウ化物イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の計画通り、ヨウ素含有廃水処理施設内の廃水サンプルや活性汚泥について、水質の化学分析と次世代シークエンサーを用いた大規模微生物叢解析を実施した。廃水サンプルと活性汚泥の全有機炭素量と全窒素量の測定を行いデータを取得した。またヨウ化物イオン(I-)濃度測定の結果、想定した通り廃水サンプルおよび活性汚泥は一定濃度のヨウ化物イオンを含むことを確認した。続いて廃水中にどのような有機化合物が含まれるかを明らかにするため、GC-MSによる有機化合物の検出を実施した。検出された約10個のピークについて、化合物のNISTデータベースを参照し各ピークの有機化合物種を推定した。次に各サンプルの原核生物と真核生物の微生物群集構造を調べるために、各サンプルからDNAおよびRNAを抽出後、次世代シークエンサーを用いた16S rRNA解析と18S rRNA解析を行った。各サンプルの微生物多様性解析、綱レベルと属レベルの微生物群集構造解析を行い、当該サンプルにおける微生物コミュニティの特性を明らかにした。続いてoperational taxonomic unit (OTU)解析を行い、各サンプル内で特徴的な優占菌種を上位10種ほど明らかにした。活性汚泥中で存在量の大きかった微生物の中には、予想された通り、ヨウ化物イオン(I-)を分子状ヨウ素(I2)へと酸化する能力をもつ既知のヨウ素酸化細菌が含まれており、当該微生物がヨウ素含有廃水処理において重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究は当初の計画通り順調に進展しており、化学工場廃水に特異的な主要微生物を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ヨウ素含有廃水処理施設内の廃水サンプルや活性汚泥について、水質の化学分析と次世代シークエンサーを用いた網羅的微生物叢解析に取り組み、次世代シークエンサーMiseqから出力された大規模データに対しデータ解析を実施できた。続いて、各サンプルについて化学分析機器等を用いて水質データを取得し、解析を行なった。現在これらの研究結果を発表用にまとめている。また、菌叢解析により明らかとなったヨウ素含有廃水処理プロセスで重要な働きをすることが予想される細菌群について、現在さらに詳細な性質解明に取り組みはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はヨウ素含有廃水処理施設内の廃水サンプルと活性汚泥について、前年度に実施した各サンプルの水質の化学分析および網羅的微生物叢解析結果から明らかとなった知見にもとづき、引き続きヨウ素含有廃水処理に関わる微生物群の解明に取り組む。当初の計画通り、活性汚泥からの細菌の集積培養を行い、廃水処理に関わる細菌の単離を目指す。 一方、昨年度に得られた菌叢データとこれまで当研究グループで蓄積した活性汚泥菌叢データとを照らし合わせることで、化学工場廃水処理に特異的な主要微生物群を見出しつつある。これらの微生物群には当初予想していなかった微生物も含まれるため、それらが廃水処理プロセスで果たす役割を明らかにするために、近縁種を菌株保存機関より取得して培養実験等も行う予定である。
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