2020 Fiscal Year Annual Research Report
高濃度ヨウ素含有排水処理施設内の活性汚泥の菌叢解析とヨウ素含有化合物分解菌の探索
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19J40243
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森田(松下) 真由美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境創生研究部門 環境機能活用研究グループ, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 工場廃水処理 / 活性汚泥 / 網羅的菌叢解析 / ヨウ化物イオン / ヨウ化物イオン酸化細菌 / C1化合物資化性菌 / 微生物間相互作用 / 水質化学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に実施したヨウ素含有廃水処理施設内の各サンプルの次世代シークエンサーを用いた微生物群集構造解析結果にもとづき、追加の水質分析(C1化合物濃度、pH、塩濃度)と、ヨウ素含有廃水処理に関わる微生物群の相互作用の解明に取り組んだ。昨年度の微生物群集構造解析の結果、ヨウ素含有廃水中には従属栄養性細菌としてよく知られているシュードモナス属細菌が一定量検出されたが、活性汚泥中では優占化していなかった。活性汚泥内では、Methyloversatilis属細菌などのC1化合物資化性菌(メチロトローフ)と、ヨウ化物イオン(I-)を分子状ヨウ素(I2)へと酸化するヨウ素酸化細菌が主要微生物として検出された。ヨウ素酸化細菌の作用により生成されたI2は微生物に毒性を示すため、活性汚泥内でのI2生成や炭素源の種類・濃度をめぐる微生物間相互作用について、主要微生物5種(シュードモナス属細菌2種、メチロトローフ細菌2種、ヨウ素酸化細菌1種)の単離株を共培養することにより検証した。その結果、有機物濃度が高い場合は従属栄養性細菌(シュードモナス属2菌とヨウ素酸化細菌)が優占化するが、そこにI-とヨウ素酸化細菌が共存することでI2毒性が生じ、従属栄養性細菌の増殖が抑制されることが分かった。一方、有機物量が少なくC1化合物量が多い場合にはメチロトローフが有利であった。この共培養実験の結果を、実環境(ヨウ素含有活性汚泥)の菌叢解析結果と比較するとよく一致していた。 また、当初の予定通りヨウ素含有化合物の分解菌の探索を実施し、対象化合物にヨードベンゼン等を選びその分解菌の取得に取り組んだが、現時点ではまだ新規の分解菌は取得に至っていない。引き続き活性汚泥からの細菌の集積培養を行い、廃水処理に関わる細菌の単離を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りヨウ素含有化合物の分解菌の探索を実施し、対象化合物にヨードベンゼン等を選び、その分解菌の取得に取り組んでいた。この小テーマについては新規分解菌の特定には至っていないが、他の小テーマで重要な進展があったため、次に記載する。昨年度に明らかにしたヨウ素含有廃水処理に関わる微生群の系内での役割を解明するため、廃水処理汚泥の菌叢解析の結果明らかとなった主要微生物5種の単離株を用いて共培養実験を行い、有機物基質への競合とヨウ素毒性をめぐる種間相互作用を検証した。その結果、実環境における微生物同士の複雑な関係性を明らかにできた。なお、本成果については学会発表を行った。ヨウ素含有廃水処理プロセスで重要な働きをすることが予想される細菌群のヨウ素毒性への応答については、今後さらに詳細な性質解明に取り組む。このように、当初計画していた小テーマ以外の部分ではあるが、興味深い研究成果が得られ、それらについて成果発表も行ったため、本研究課題が概ね順調に進展していると判断した。今後は実験計画の遂行と並行して論文発表に向けた準備を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、これまで明らかにしたヨウ素含有廃水処理施設内の廃水と活性汚泥サンプルの菌叢解析結果と水質分析結果にもとづき、当該廃水処理プロセスに関わる微生物群の解明に取り組む。まずは当初の計画通り、水質分析結果からヨウ素含有廃水に含まれていると推定された有機化合物や、ヨウ素含有化合物等を含む培地を用いて、それら有機化合物の分解に関わる細菌の活性汚泥からの集積および単離を目指す。細菌の単離ができた場合、育種等により高濃度ヨウ素含有化合物の耐性菌取得を目指す。一方、初年度および2年度目の研究により、ヨウ素含有廃水が活性汚泥微生物群に大きな影響を与えることや、その結果として特徴的な微生物コミュニティが活性汚泥内に形成されることがわかっている。そのため本年度は、ヨウ素を一般の活性汚泥に添加し、それによって活性汚泥中の微生物群がどのような影響を受けるかという点についても解析したい。得られた結果については、投稿論文として発表することを目指す。
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