2019 Fiscal Year Annual Research Report
東北タイ農村における社会変動と親密圏に関する研究: 女性同士のつながりに注目して
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19J40270
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
木曽 恵子 宮城学院女子大学, キリスト教文化研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | タイ / 東北タイ / 親密圏 / ケア / 少子高齢化 / 女性同士のつながり / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東北タイ農村におけるリプロダクション、および育児や高齢者の扶養・介護といったケアに焦点を当て、それらにまつわる諸実践がどのような価値、社会関係のなかで行われているのかを検討することを通して、グローバル化や少子高齢化を背景にした当該地域の親密圏の動態を明らかにすることである。 初年度の具体的な研究実施状況は以下の通りである。 (1)東南アジア学会や国際ジェンダー学会に参加し、東南アジアのケア研究やジェンダー研究の動向を把握するとともに、当該分野の研究者との研究交流を行い、来年度以降の本研究の方向性について明確にした。(2)予定していた現地調査を延期したため、国内にてタイの家族政策や高齢者政策に関する文献資料の収集と農村部の保健ボランティアへの聞き取り(ビデオ通話)を行い、東北タイ農村において高齢者政策がどのように進められているのかについて検討した。(3)東南アジアの高齢者に関する研究および人類学のエイジングやケアに関する先行研究の理論的検討を行った。(4)これらの研究活動を踏まえ、学会、研究会において研究報告を実施した。 タイでは少子高齢化が急速に進んでおり、メディア上では育児をめぐる新たな言説や都市部における高齢者介護の必要性、そのケアの担い手不足が問題となりつつある。一方で農村部では、現状として高齢者ケアをめぐる問題は顕在化してはいないが、農村部に残っている人口ボーナス世代の女性に高齢者、および子どものケア負担がのしかかっている状況が見えてきた。農村コミュニティのなかで、親族・家族が協力して高齢者や子どものケアをするというこれまでの理念的な状態が保たれつつも、家族主義的な限定的なケアの状況も混在している。こうしたケアの担い手をめぐる動きを通して、女性たちの日常の挑戦や交渉の先にどのような変革や変容の可能性が見えてくるのか、注意深く検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度末にタイでの現地調査を予定していたが、新型コロナウイルスの影響によるタイ国内の状況悪化とタイ保健省や大学等からの要請状況(感染拡大地域からの渡航後14日間の自宅等における症状の観察要請、および主要大学における教員や学生の日本を含む感染拡大地域への渡航、感染地域からの受け入れ禁止など)を受け、バンコク首都圏、および農村部での調査や移動が困難と判断し、予定していた渡航を来年度に延期したため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は延期した調査を12月から1月、および3月に実施する予定である。今後は、研究動向をより詳細に分析し、理論的な検討をすすめるとともに、農村部における育児と高齢者ケアの実態についてより詳細なデータ収集を行っていく。
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