2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J40302
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
林 和子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2020-01-06 – 2023-03-31
|
Keywords | 前頭前野 / 学習 / オプトジェネティクス / 電気生理 / 行動薬理 |
Outline of Annual Research Achievements |
かたちを持たず、化石にも残らない「こころ」にもダーウィンの進化論が当てはまるとするなら、我々が持つ「高次認知機能」と呼ばれるものにも原点が存在するのではないか。本研究では、その進化の鍵を前頭前野に求める。ヒトの脳の進化における重要な解剖学的要因として、「前頭極の肥大化」と「前頭前野内側部におけるスピンドル細胞の出現」の2つを挙げることができる(Allman et al., 2002)。ヒトの「こころ」や知性といったものが物質である脳の神経細胞の電気化学的活動によって生み出されるという前提に立つとき、前頭前野は我々ヒトが「よりよく生きる」ための「人間性」を育む領域であると言えるかもしれない。本研究では、「こころ」の進化の謎を解き明かすため、前頭前野およびその投射領域との神経連絡に着目し、動物心理学・神経科学・行動薬理学・分子生理学といった多角的アプローチを通して「高次認知機能」の原点に迫ることを目的とする。初年度となる本年度は、2020年1月から3月までの3ヶ月という短い期間ではあったものの、研究環境の迅速なセットアップを目指して、行動実験を開始するにあたって必要となる装置や制御プログラムを含む新たな課題の構築に着手し、設備の整備、実験動物の管理、予備データの取得とその解析などを行った。これらの入念な準備により、次年度からの本格的な研究計画の立ち上げへと円滑につなぐことができたものと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一時的に実験の休止を余儀なくされるなどの影響はあったが、その間にもデータ解析を進めた。また、コロナ禍において当初計画していた海外の研究施設訪問は実現できなかったものの、オンライン上で共同研究先との連携を深めながら議論を重ね、国内学会での発表につながった。セットアップも順調に進行し、初年度としては一定の進捗が得られたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、予備実験の結果を踏まえ、パラメーター設定などを仔細に検討しながら、頭部固定課題の構築と動物の訓練を行う。また、行動指標として、リッキング、眼球運動、瞳孔サイズ変化などを測定することを検討しており、これらのデータを解析するとともに、動物の課題遂行中に活動する脳領域について最初期遺伝子を用いて広く探索を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)
-
[Presentation] Effects of differences in physical surface properties on facial expression discrimination in macaque monkeys2020
Author(s)
Kazuko Hayashi, Narihisa Matsumoto, Keiji Matsuda, Kenichiro Miura, Shigeru Yamane, Shin Matsuo, Keiji Yanai, Mark A. G. Eldridge, Richard C. Saunders, Barry J. Richmond, Yuji Nagai, Naohisa Miyakawa, Takafumi Minamimoto, Masato Okada, Kenji Kawano, Yasuko Sugase-Miyamoto
Organizer
第43回日本神経科学大会