2020 Fiscal Year Research-status Report
"Eternal now" and lived experience - Aesthetics and theory of time in Kitaro Nishida's philosophy
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19K00001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本哲学 / 美学 / 時間論 / 西田幾多郎 / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先行する申請課題「「現在の平面」―西田幾多郎における時間論と存在論」(基盤 C、平成 25-27 年)および「「ファンタスマタの世界」-西田幾多郎における美学と時間論」(基盤C、平成28-30年)において得られた研究成果を継承し、発展させるものである。これまでに申請者は、西田幾多郎の各時代の著作において、「時間」がどのように捉えられているかを、イタリア語に全訳しながら分析してきた。その過程において、西田が前期から後期へと独自の哲学を発展させながら、プラトン主義的な「永遠」から、それとは異なる「現在の平面」のような「永遠の今」の非形而上学的な時間論へ進んでいったということが分かってきた。また、西田の時間論の中は、彼の美学・芸術論が密接につながっていることが明らかとなった。 そのため、本研究においては、西田の全著作において、「時間」の概念がどのように記述されているかについて抜き出し、各時期の記述を西田の思想展開の中で跡づけることを試みた。特に、西田の時間論と美学、存在論の関係について、他の哲学者、特に道元、ドゥルーズと比較し、世阿弥を参考にしながら、海外の研究協力者と議論を踏まえつつ、考察を行なった。それに平行して、近年継続して行ってきた西田の著作のイタリア語訳を引き続き行ない、イタリアにおける西田幾多郎全集の出版活動も続けた。今年度は、法政大学でのゼミナールや日本文化研究センターの国際シンポジウムに招待され、西田の時間論についての発表を行ったほか、昨年西田全集イタリア語版の第6巻となる『働くものから見るものへ』の翻訳がほぼ終了することができた。オンラインでの国際共同研究を促進するために、インターカルチャー哲学の国際研究グループのHPも立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イタリアにおける西田幾多郎全集の出版活動を順調に続けることができ、昨年西田全集イタリア語版の第2巻として出版した『思索と体験』に続き、第6巻となる『働くものから見るものへ』の翻訳・改訂作業がほぼ終了している。この著作の翻訳は現在フランス語のみしか出版されておらず、完成すれば学術的インパクトは大きいと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍によって遅れている西田幾多郎全集イタリア語版第6巻となる『働くものから見るものへ』の出版を目指す。西田の著作を丹念に読み解く作業を続け、できれば第7巻となる『一般者の自覚的限定』にも着手したい。国際共同作業も加速し、インターカルチャー哲学の国際研究グループによる共同研究を推進し、論考をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大によって2020年に予定されていた西田哲学会国際シンポジウムやイタリアへの海外出張が中止になったため。今年度の国際共同研究を促進するために、オンラインで行えるシステムを設計し、H Pの拡充、英語での論文発表や機器やソフトウエア等の支出へあてる予定である。
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