2021 Fiscal Year Research-status Report
"Eternal now" and lived experience - Aesthetics and theory of time in Kitaro Nishida's philosophy
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19K00001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本哲学 / 美学 / 時間論 / 西田幾多郎 / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先行する申請課題「「現在の平面」―西田幾多郎における時間論と存在論」(基盤 C、平成 25-27 年)および「「ファンタスマタの世界」-西田幾多郎における美学と時間論」(基盤C、平成28-30年)において得られた研究成果を継承し、発展させるものである。これまでに申請者は、西田幾多郎の各時代の著作において、「時間」がどのように捉えられているかを、イタリア語に全訳しながら分析してきた。その過程において、西田が前期から後期へと独自の哲学を発展させながら、プラトン主義的な「永遠」から、それとは異なる「現在の平面」のような「永遠の今」の非形而上学的な時間論へ進んでいったということが分かってきた。また、西田の時間論の中は、彼の美学・芸術論が密接につながっていることが明らかとなった。 そのため、本研究においては、西田の全著作において、「時間」の概念、特に「永遠」の概念がどのように記述されているかについて抜き出し、各時期の記述を西田の思想展開の中で跡づけることを試みた。具体的には、プラトン主義のキリスト教的な永遠の意味からの変化について、ストア学派、ドゥルーズ、禅仏教を参考に考察を行なった。これらの考察について、国際日本文化研究センターにおいて2021年2月に行なった発表「永遠と体験-西田幾多郎の時間論に関する考察」をもとにし、「西田幾多郎の思想における「永遠」概念の変遷をめぐる一試論」と題した論文を発表した。 これらの活動に平行して、西田の著作のイタリア語訳を引き続き行なった。今年度で西田全集イタリア語版の第6巻となる『働くものから見るものへ』の翻訳が終了し、出版を待つ段階である。国際共同研究を促進するために、インターカルチャー哲学の国際研究グループ「Mushin'en」を立ち上げ、オンラインによる研究集会も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イタリアにおける西田幾多郎全集の出版活動を順調に続けることができ、西田全集イタリア語版の第6巻となる『働くものから見るものへ』の翻訳・改訂作業が終了した。この著作の翻訳は現在フランス語のみしか出版されておらず、出版されれば学術的インパクトは大きいと考えられる。第7巻となる『一般者の自覚的限定』の下訳も一通り終了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍によって遅れている西田幾多郎全集イタリア語版第6巻となる『働くものから見るものへ』の出版を目指す。第7巻となる『一般者の自覚的限定』の校正等、完成に向けて尽力したい。国際共同作業もますます加速し、インターカルチャー哲学の国際研究グループによる共同研究を推進し、オンライン会議などを活用して論考をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大のため、海外渡航や国際ワークショップなどが延期され、一部はオンライン開催となったため。2022年度は成果のイタリアにおける出版など、昨年度予定していた渡航を行ない、研究の最終年度としてのシンポジウムなどを開催する予定である。
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