2021 Fiscal Year Research-status Report
The Evolvement of "Emergence" Concept and the Ontology of "Emergence"
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19K00005
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
森 秀樹 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00274027)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 創発 / 進化 / 科学論 / Herbert Spencer |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)論文「スペンサー「総合哲学の体系」の形而上学的構想」は、スペンサーが、進化概念を原理とする体系化によって、全体として何を目指したのかを明らかにすることを試みた。まず、『第一原理』を通して、スペンサーが体系的な記述を行うにあたって進化という概念を原理とした理由を考察し、『総合哲学の体系』が形而上学的な目的をもっていることを明らかにした。次に、『生物学原理』に依拠しながら、進化とは、生物が環境との相互作用の中で互いに絡み合う関係を形成することを意味することを確認した。そして、『心理学原理』に基づいて、認識が環境との絡み合いを認知する役割を担っていることを確かめた。そのような認識能力を備えた存在が集まるとき、社会や倫理といった新しい秩序が生まれるが、それらは進化を促進する役割を果たすということを明らかにした。これらの議論に基づいて、『総合哲学の体系』は全体として統一的な形而上学的構想を示すことを目的としていたことを明らかにした。 (2)論文「スペンサーにおける科学論と創発の進化論的解釈」は、スペンサーの思想を「進化論的認識論」として解釈することで、その立場から科学哲学における創発に対する批判を検討した。まず、スペンサーの思想を「進化論的認識論」と解釈することができることを確認した。そして次に、この立場に立つことによって、科学とは状況に巻き込まれた科学者集団による試行錯誤を通して形成される、世界と相関的な実在的構造として理解することができるということを明らかにした。その上で最後に、科学を進化論的な仕方で解釈するとき、科学哲学における創発の議論にどのような寄与をなしうるのかを考察し、科学にとって実在は創発的な有り方をしており、かつ、その発見や実証もまた世界の中での創発的な出来事であるということを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)令和3年度に行った研究の内、公表していない部分について論文執筆を行った。H. Spencerらの進化論から、(環境との相互作用においてより複雑な機能が分化していくという)システム論的な発想を析出し、研究実績に記載した成果を上げることができた。すなわち、還元主義的科学哲学が創発を認識論的なものでしかないと批判してきたのに対して、スペンサーの思想を「進化論的認識論」として解釈することで、創発に対する批判の再検討を行った。 (2)これと平行して、S.Alexander, Space, Time, and Deity, C. L. Morgan, Emergent Evolutionといった、代表的な創発主義の著作から、創発の具体的な内実を明らかにすると同時に、彼らが前提としていた科学論についての考察を行った。そのことを通して、創発という概念が、環境の中での意味の生成に注目するものであり、この観点からすれば、科学の営みすら一種の創発と見なすことができるということを明らかにすることができた。還元主義的科学哲学は創発主義を実体論的なものとして解釈しがちであるが、創発主義者は創発を、環境を含めた新しい関係性が生まれることとして考えているのである。ただし、この成果については論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度に行った研究の内、公表していない部分について論文執筆を行う。その上で、創発や進化論的認識論といった着想が現代の科学哲学にどのような寄与をなしうるのかを検討する。まず、還元主義的科学哲学と複雑系の科学との論争を振り返る。還元主義的科学哲学の代表例としてE.Nagel, The Structure of ScienceやC. G. Hempel, & P. Oppenheim, "Studies in the Logic of Explanation"を、還元主義批判をおこなった複雑系の科学の典型としてS. A. Kauffmanの主張を検討する。その際、現代における心の哲学(例えば、J. Kim, Mind in a Physical World)や生物学の哲学(例えば、K.Sterelny & P.E.Griffiths, Sex and Death, Chap.7)における創発をめぐる議論を踏まえた上で、Van Frassen, The Scientific Imageにみられる反実在論的科学論と実在論的科学論とのの論争点について進化論的認識論の立場から調停を試みる。
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Causes of Carryover |
研究の遂行がやや遅れたため、追加で必要となる資料の購入を措置するため。
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Research Products
(2 results)