2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Evolvement of "Emergence" Concept and the Ontology of "Emergence"
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19K00005
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
森 秀樹 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00274027)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 創発 / 科学哲学 / 還元主義 / 進化 / 心的因果 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文「イギリス創発主義の現代的意義」は、創発概念の概念史を踏まえた上で、創発概念に対する批判を吟味し、再批判を行うことで、以下のことを明らかにした。(a)創発が存在論的な意味をもちうるためには、構成要素が何らかの構造を形成しているだけではなく、さらにその構造が上位の階層の中で何らかの機能を果たしていることが必要である。(b)自然科学において、個別領域における性質や法則を記述する個別科学と、個別科学の内容を基礎的科学に還元することとは別の活動であり、後者の個別科学を基礎的科学へと還元することは、上位の階層における存在者のあり方をうまくシミュレートすることのできる下位の階層における構成要素の構造を発見することであり、それが科学的説明のモデルとなっている。(c)創発主義は創発を進化のプロセスとして理解している。それは単に、新しい構造が生まれるというだけのことを意味するのではない。進化とは、上位の階層における因果関係が低次の階層における出来事の連鎖にうまくかみ合うような構造を創発させることであり、下位の階層における出来事の構造は上層における因果関係を介在させなければ、理解できない。(d)創発主義は、心的現象と物的現象という相互に独立している階層の間に、心における作用因が物の領域での因果関係とが相関するようになる進化のプロセスを介在させることによって、二つの階層を結びつけることに成功し、心的因果の課題を解消している。この論文は、創発が単に認識論的なものではなく、存在の秩序の間に見られる存在論的な構造であること、そして、科学にとって実在は創発的な有り方をしており、かつ、その発見や実証もまた世界の中での創発的な出来事であることを明らかにしており、当研究課題全体の成果を総括するものとなっている。
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Research Products
(1 results)