2020 Fiscal Year Research-status Report
善・美・正義の倫理学的解明を目指す後期プラトン哲学の存在論・認識論的探究
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19K00011
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
栗原 裕次 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40282785)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラトン / イデア論 / 古代ギリシアの倫理学 / 古代ギリシアの存在論 / 古代ギリシアの政治哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、後期プラトン哲学の包括的理解を目指して、後期対話篇の内、とりわけ『パルメニデス』『政治家』『ソフィスト』の集中的研究を行った。 『パルメニデス』については、第一部と第二部を繋ぐ「移行部」の詳細な読解を通じて、善・美・正義の倫理学的探究に先立つ哲学的訓練の重要性をイデア論(存在論・認識論)との関係から考察し、中期イデア論と後期イデア論の異同に関わる新しい論点を提示することができた。 『政治家』については、後期プラトンの哲学的方法としてのディアレクティケーが分割法のみならず、文学的色彩を有する物語(ミュートス)を内含しつつ展開している点を明らかにした。同時に、プラトン後期の政治思想の中で、善・幸福、正義、神・コスモスと人間との関係がどのように取り扱われているかを解釈した。さらに、『政治家』における「像」の使用について、その探究上の意味を考察し、それが中期イデア論の像理論とは異なる視座から位置づけられていることを強調した。 また、国内の複数の研究者と定期的に後期対話篇『ソフィスト』の原典講読を行い、共同の場で後期プラトン哲学の理解をさらに深めるようにつとめた。この基礎作業は2021年度の研究の土台となっている。 以上の研究は、本研究全体の内、プラトンの善・美・正義の倫理学的関心の絶えざる継続と後期プラトン哲学のとりわけ方法論的な独自性を明らかにするために役立つものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大のため、当初予定していた海外研究者の招へいを通じての共同研究はかなわなかったが、オンライン開催による国際会議での発表や、ブラジル在住のプラトン研究者とのZoomによる複数回の討議により、国際的な共同研究を推進することはできた。また、後期プラトン哲学の解明を目指した論文を2本公刊することで、研究課題に関する成果を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降も、本研究の進め方は基本的に同じであるが、今年度は後期プラトンの存在論と哲学的方法論との関係に光を当てて、特に『ソフィスト』と『政治家』の読解を行う。昨年度以来計画していた、海外研究者の招へいについては、様々な状況の変化を見つめつつ、来年度の実施も見据えた長期的観点から判断し、適宜推進していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大のため、当初予定していた海外研究者の招へいができず、人件費・謝金を使用することができなかった。また、旅費についても、同様の理由で、国内で開催予定であった学会も開催されなかったり、オンラインで参加することになったりしたことで使用の機会が失われ、さらに国際会議での発表もオンラインでの参加となり、旅費の使用がなかった。そのため2021年度にそのまま繰り越すことになった。
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