2021 Fiscal Year Research-status Report
善・美・正義の倫理学的解明を目指す後期プラトン哲学の存在論・認識論的探究
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19K00011
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
栗原 裕次 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40282785)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラトン / イデア論 / 古代の倫理学 / 古代の政治哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、後期プラトン哲学の包括的理解を深めるべく、前年度に引き続き、後期対話篇の内、とりわけ『政治家』『ソフィスト』の集中的研究を行い、さらに『ピレボス』の原典研究(また、後期対話篇との繋がりが深い『パイドロス』の原典研究も)を開始した。 『政治家』については、後期プラトンの哲学的方法の一つである「パラデイグマ(雛型)」論をテキスト読解を通じて解明につとめた。そして、善・美・正義といった大切なことを探究するために、より身近でよく知られている雛型を最初に考察して訓練する方法の意義に光を当てた。その成果として、この問題意識から書かれた論文を国際雑誌に発表した。 さらに『政治家』の政治哲学を政体論という観点から明らかにしようとした。市民にとっての善を知る真の政治家・王の統治と対比して、知識を欠く統治者が支配する政体の分類を調査した。このことを主題にした発表を国内の学会で行い、ギリシア哲学以外を専門とする研究者と意見交換を行った。 また、国内の複数の研究者と定期的に後期対話篇『ソフィスト』の原典講読を行い、共同の場で後期プラトン哲学の理解を深め、2022年度の国際学会で発表できる研究へと高めた。そして現在、共同研究の対象を『ピレボス』へテキストと移し、原典講読を継続中である。(さらに、中期プラトン哲学との密接な関係を『パイドロス』に認め、別の研究者と原典講読を実施している。) 以上の研究は、本研究全体の内、プラトンの善・美・正義の倫理学的関心と政治哲学との繋がりを見て取り、後期プラトン哲学の方法論的や存在論の重要性を究明するのに役立つものになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染が収まらないため、当初予定していた海外研究者の招へいを通じての共同研究はかなわなかった。また、国際会議に対面で参加することもできなかった。しかしながら、オンライン開催による国際会議(ドイツ、ペルー、アメリカの大学主催)への参加を複数回行うこと(またその後のメールのやり取り)により、海外の研究者と意見交換を行うことができた。また、アメリカの研究者とメールを通じて、お互いが執筆中の論文について論評をやり取りすることで、国際的な共同研究を推進することになった。後期プラトン哲学の解明を目指した論文を国際雑誌に公刊することで、研究課題に関する成果を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、本研究の進め方は基本的に同じであるが、今年度は後期プラトンの存在論と政治哲学、倫理学との関係に光を当てて、特に『ソフィスト』『政治家』『ピレボス』の読解を行う。『ソフィスト』については、7月にアメリカ(ジョージア大学)で開催される国際プラトン学会で発表を予定している。一昨年度以来計画していた、海外研究者の招へいについては、様々な状況の変化を見極めつつ、慎重に判断し、できる限り積極的に推進していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染が収束しなかったため、当初予定していた海外研究者の招へいができず、人件費・謝金を使用することがかなわなかった。また、旅費についても、同様の理由で、海外で開催された学会もオンラインで参加することになり、使用の機会が失われた。そのため2022年度にそのまま繰り越すことになった。
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Research Products
(2 results)