2022 Fiscal Year Annual Research Report
善・美・正義の倫理学的解明を目指す後期プラトン哲学の存在論・認識論的探究
Project/Area Number |
19K00011
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
栗原 裕次 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40282785)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イデア / 善 / 美 / 正義 / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度においては、後期プラトン哲学の中でも『ソフィスト』と『政治家』に集中して研究を進めた。『ソフィスト』については、後期イデア論の中核となる〈異なり〉のイデアの役割を解明し、そのイデアが〈ある〉のイデアと並んで、イデアを存在せしめる超越的イデアであることを示した。イデア相互間の原因関係を明らかにすることによって、感覚世界をイデアによって説明することを意図する中期イデア論とは次元の異なる後期イデア論の独自性を浮き彫りにした。このことを主題とした報告を2022年7月に米国アセンズに開催された国際プラトン学会第13回シンポジウムで行った。『政治家』に関しては、様々な政体のあり方を取り扱った「政体論」の解釈につとめ、後期プラトン哲学が今日の民主政を批判的に捉え直す視点をもっていることを確認した。 研究期間全体を通じて得られた成果としては、第一に、2019年度・20年度の『パルメニデス』の研究によって後期プラトンがイデアの存在と密接に関わる〈学び〉の生成それ自体を主題としており、後期対話篇が〈学び〉を構成する「論理的イデア」の役割を特定する課題に取り組んでいる側面が見えてきたこと、第二に、2021年度・22年度の『ソフィスト』の考察が示すように、とりわけ〈異〉のイデアが存在論的に特別の役割を果たしているのを指摘できたこと、第三に、2020年度・22年度の『政治家』の研究は、後期プラトンが中期と同様の文学的手法(神話の使用)を用いながらも、宇宙論を展開することで自然の一部としての人間論を描き出すとともに、その「政体論」によってプラトン哲学の現代性を示し得たこと、などがある。また、2019年度に委員として国際会議の運営に携わると共に、研究期間を通して2度国際会議で発表し1本の論文を国際誌に掲載することで、海外の研究者たちとの交流を深めることができた。
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