2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00013
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
土屋 貴志 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (90264788)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 研究倫理 / 応用哲学 / 医療倫理 / 被験者保護 / 倫理教育 / 道徳教育 / 研究不正 / 731部隊 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2019年度は、研究実施計画に掲げた「これまで応募者が取り組んできた被験者保護に加え、消費者保護と実験動物の虐待防止に関して研究を進める」という目標を若干修正し、まず、哲学・倫理学として研究倫理のような具体的な問題に取り組む際の留意点を総論的に確認する学会発表を行なった(応用哲学会、4月)。また、研究代表者が長年取り組んできた被験者保護に関し、医療倫理と研究倫理における重要性を再確認し学会発表した(保団連医療研究フォーラム、10月)。その間、本科研費研究のプログラムとその意義に関して国際学会で発表した(国際医事法生命倫理学世界会議、8月)。 さらに、研究倫理教育の意義と留意点に関連し、日本国公認学校道徳教育と人権教育の本質について考察し論文を執筆公刊した(11月)。倫理教育・道徳教育に関しては、新たに日本倫理道徳教育学会にも入会したほか、10月から奈良県御所市立大正中学校の道徳授業アドバイザーを務めるようになった。こうして、学校道徳教育や人権教育に関する知見と考察をさらに深めながら、研究倫理教育を改善する方策を模索している。その成果の一端は、所属先の大阪市立大学において、分担している全学共通大学院科目「研究倫理」の授業や、全学の研究倫理研修に関する助言などに活かしている。 2020年4月現在、上記2019年10月に学会発表した内容を本の1章として執筆中である。また、考古学における不正行為(旧石器捏造事件)と、軍事研究倫理および医学における利益相反に関する研究に取り組み、2020年度前半に学会発表と文献執筆を行う予定であったが、目下のところCOVID-19感染流行拡大による社会情勢のため発表を保留している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2019年度は、研究実施計画に掲げた「これまで応募者が取り組んできた被験者保護に加え、消費者保護と実験動物の虐待防止に関して研究を進める」という目標を若干修正し、研究プロジェクト自体の意義の再確認、被験者保護の重要性の再確認、人文科学研究における研究不正事例(旧石器捏造事件)の検討、研究に対する圧力の適切な処理(軍事研究倫理、および医学研究における利益相反に関する事例[降圧剤ディオバン事件])の検討、をそれぞれ行なった。研究不正と研究に対する圧力の適切な処理という課題を先に着手した代わりに、消費者保護と実験動物虐待防止についての研究は次年度以降に回したため、全体としてはおおむね順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の2020年度と最終年度の2021年度に関しては、残る課題(研究者の安全確保、実験動物の虐待防止、環境汚染の防止、研究費の不正使用の防止、研究成果の発表における不正防止、研究成果としての製品を使う消費者の保護、研究成果の利用に対する責任)に取り組むとともに、2019年度に取り組んだ課題(被験者保護、研究不正、研究に対する圧力の適切な処理)に関しても検討を継続し考察を深める。
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Causes of Carryover |
国際学会は、国内(早稲田大学)で行われた国際会議に参加し発表したため、国外旅行を行う必要がなかった。また、2月と3月に開かれる3つの学会ないし研究会に出張参加する予定であったが、COVID-19感染拡大のため全て中止になり、旅費の残額を執行できなかった。 2020年度に繰り越して執行する予定であるが、2020年4月20日現在、緊急事態宣言が解除される見込みが立たず、国内外の学会大会等が軒並み中止になっているため、使用計画通りに旅費を執行できるかどうかは未定である。 パーソナルコンピュター等の購入に伴い、周辺機器の整備に予想外の費用がかかり、研究計画に記載した機器の購入が進んでいないため、2020年度の物品費および「その他」の支出は計画書に記した予算よりも多くなる見込みである。
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