2019 Fiscal Year Research-status Report
形式主義の哲学の新展開:竹内外史の論理哲学の解明を通じて
Project/Area Number |
19K00022
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋吉 亮太 早稲田大学, 高等研究所, その他(招聘研究員) (20587852)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 哲学 / 論理学 / 証明論 / 形式主義 / 京都学派 / 西田幾多郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は竹内外史の論理哲学に関する研究を進めた. 第一に,竹内の論理哲学と京都学派とのつながりを指摘した論文をパリ第一大学哲学科Andrew Arana准教授と執筆し,査読を経て『哲学論叢』から出版した.この成果については,8月にプラハで開催された国際会議Logic Colloquiumやミュンヘン大学数学科のOberseminar Mathematische Logikなどにおいて口頭発表を行い,様々なリアクションを得ることができた.竹内外史の証明論の具体的な数学的成果を西田哲学によって読み解く試みにも着手した. 第二に,竹内が主要著作Proof Theory (1975, North-Holland)で与えている,ε0までの順序数についての整礎性証明を整理する課題に着手した.竹内の論理哲学を再考する上でこの議論は極めて重要であるが,その全体的構造は未だ不明である.そこで,現代証明論のツールを用いることでこの議論を正確に定式化してドラフトを執筆した.整礎性の定義を与える際に無限下降列を用いるかどうかが焦点であったが,これはミュンヘン大学数学科のChuangjie Xu博士との議論することで解決された. 第三に,竹内の証明論的プログラムの哲学的なゴールを読み解くために,西洋における証明論の発展において代表的な存在であったフェファーマンとクライゼルとの関係性を探求する研究に着手した.これまでは竹内はヒルベルトやゲンツェンの後継者であり,フェファーマンやクライゼルに比べるといわゆる「古いタイプの研究者」として位置づけられることが多かったが,逆に,竹内は彼らの視野には収まらない思想を持っていたのではないか,というアイディアを得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一年目にして論文が出版できたことは予想外の成果であり,なおかつ,今後に向けて哲学的・論理学的な複数の論文を執筆開始することができた.投稿までには至っていないものの,ドラフトの一つは来年度の半ばまでに投稿可能な完成度にある.また,欧州で複数回に渡って行った招待講演のリアクションは非常にポジティブなものであった.さらに,本研究のために西田,末綱,下村といった京都学派(ないしはこれに大きな影響を受けた)の思想家の文献を精査することで,竹内と京都学派のつながりに関して新たな展望が開けつつある. 次の波及効果もあった.報告者の竹内研究の新規性が欧米の研究者の注目を集めた結果,バーミングハム大学哲学科のSalvatore Florio上級講師がプロジェクトリーダー,報告者と数名の研究者がパートナーとなって,2020年5月に竹内外史の論理哲学に関する国際WSを開催することが決定した.(学会自体はコロナのため延期になったが開催予定) したがって,本研究課題は当初の計画以上に順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は,第一に竹内が主要著作Proof Theory (1975, North-Holland)で与えている,ε0までの順序数についての整礎性証明を正確に定式化したドラフトの出版を目指す.草稿自体は執筆が進んでいるため早い段階での投稿を目標としたい. 第二に, 西洋における証明論の発展において代表的な存在であったフェファーマンとクライゼルの論理思想と竹内のそれを比較する研究を進める. 第三に,竹内の論理思想と西田哲学の関係性についてさらに研究を進める.とくに竹内が用いている「直観」「自己反省」といった概念の内実を,西田哲学における対応物(と予想されるもの)と比較する.その準備作業として,竹内が言及している末綱の論理思想をサーヴェイする.
|
Causes of Carryover |
物品(図書)購入費にあてることを予定していたが,残金が少額であり, 研究遂行に必要な物品の調達に十分な金額ではなかったため,次年度 繰越とした.2020年度直接経費と合せて図書の費用にあてる予定である。
|
Research Products
(12 results)