2022 Fiscal Year Annual Research Report
Philosophical Approach to the View of Humanity in Classical Antiquity through an Analysis of the Debate about the Generation of Animals
Project/Area Number |
19K00026
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
今井 正浩 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (80281913)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 西洋古代の人間観 / 発生理論 / ヒッポクラテス / プラトン / アリストテレス / 初期アレクサンドリア医学 / ガレノス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒトを含めた動物の生殖発生をめぐる論争史を通してみた西洋古代の人間観の特質を、古典ギリシア語・ラテン語の原典資料に基づいて実証的に解明しようというものである。 本研究の最終年度にあたる令和4年度には、以上の論争がヘレニズム期をへてローマ期に至って、医学者たちや同時代の哲学者たちによって、どのような方向に展開していったかという点に軸足を置いて、この論争の帰趨に焦点をあてることを課題とした。その中でとくに着目したのは、ヒッポクラテスと並んで、西洋古代の医学の進展において主導的な役割を果たしたとされる、帝政ローマ期の医学者ガレノス(129-c.216 AD)の発生理論である。本年度は『精液について』と題する論考(全2巻)を考察の対象として取り上げることによって、この医学者の発生理論とその特質を解明するための作業に重点を置いた。 ガレノスは、ヒッポクラテスの医学書(『生殖について』『子供の自然本性について』『疾病について』第四巻から構成されている一連の論考等)や、アリストテレスの動物学論考(『動物の発生について』等)を入念に検証しつつ、初期アレクサンドリアの医学者たち(ヘロピロス、エラシストラトス等)によって提供された解剖学的知見に自らの知見等を加えつつ、ヒトを中心とする動物の発生をめぐる先人たちの諸見解に対して批判的な応答を展開するとともに、独自の見解を示している。 ガレノスの発生理論のもっとも特徴的な点は「精液(スペルマ)は男女(雄雌)がともに提供する」という前提に立って、(1)男女(雄雌)の性別の決定、(2)親子間の類似性等の諸問題の究明に取り組んでいるという点である。以上の前提は「質料形相論」に立ったアリストテレスとその支持者たちによる動物の発生理論の伝統に対して、根本的な修正・変更を迫るものであった。 以上のことを、令和4年度における研究成果として示した。
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