2021 Fiscal Year Research-status Report
「真理の多元論」と整合的な形而上学的立場についての研究
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19K00028
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
井頭 昌彦 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70533321)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 質的研究方法論 / 真理 / 因果 / KKV |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に引き続き社会科学分野での真理概念の運用実態を明らかにする作業を進めた。そのための作業の一環として、標準的な統計分析手法とは異なる潮流として指摘されることの多い「過程追跡(process tracing)」および「質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis: QCA)」についての文献調査を行うとともに、そこで想定されている因果関係についての理解、およびそれを認識・把握するための手法が、標準的な統計分析手法とどのように異なっているかを明らかにした。この知見は、様々な学問領域において想定されている因果概念の異同を明らかにするだけでなく、その背後に想定される形而上学的描像を明確化するために重要な情報となり、最終的には各分野での研究実践がどのような真理概念を前提しているか(あるいは前提せざるを得ないのか)ということを明らかにするための手がかりを与えると想定される。また、哲学的議論の進展を踏まえた上での社会科学方法論についての分析、特に、背後で想定されている因果観や真理論的立場についての分析はあまり進んでおらず(cf. A. Bennett, "Do New Accounts of Causal Mechanisms Offer Practical Advice for Process Tracing?" in Qualitative and Multi Method Reserch, 2016)、この意味において当該知見は社会科学の現場に対する示唆的フィードバックの意義も併せ持つと言える。この成果については、社会科学の研究者が集う一橋大学社会学研究科先端課題研究19において「KKVに対する既存の反論の整理」として報告予定であり、また別の視点から2022年5月17日に東京大学社会科学研究所のセミナーで検討した後、研究代表者が編著者を務める形で2022年度中に出版予定の論文集の一部として公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真理の多元論を展開し《対応》以外の真理実現性質の存在を主張する際には、従来持ち出されることの多かった倫理言説以外の言説についても分析を進める必要がある。2020年度に引き続いてこの作業に取り組み、具体的な研究方法論に即して一定の成果を上げられた点は本研究課題の進捗として一定の評価ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、引き続き社会科学分野での真理概念の運用実態を明らかにしていくと共に、プラグマティズムとの関係を考える上で重要な「科学の価値中立性」理念についての調査・分析を進めていく。この作業を通して、真理の多元論に適合的な形而上学的描像をプラグマティズム経由で明らかにしていくという全体計画を着実に遂行していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ流行以前に立案した計画のうち、学会出張や研究会開催などについて、コロナ禍のなかで予定通りに実施できなかったため、次年度使用額が生じた。2022年度は感染対策に留意した出張を少しずつ入れるとともに、サーベイ補助などの簡易な業務委託などにも経費を執行していく。
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Research Products
(1 results)