2022 Fiscal Year Research-status Report
「真理の多元論」と整合的な形而上学的立場についての研究
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19K00028
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
井頭 昌彦 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70533321)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 質的研究方法論 / 真理 / 因果 / KKV |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は中間報告的な研究成果の公表として、井頭昌彦(編)『質的研究アプローチの再検討ーー人文・社会科学からEBPsまで』(勁草書房、2023)を刊行した。本研究課題との関わりが特に強いものとしては、「過程追跡(process tracing)」および「質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis: QCA)」についての文献調査、およびそこで想定されている因果関係についての理解、およびそれを認識・把握するための手法が標準的な統計分析手法とどのように異なっているかについての解説を含む「第2章:KKV論争の後で質的研究者は何を考えるべきか――論争の整理と総括」が2021年度に行った成果を踏まえたものとして挙げられる。また、「終章:「質的」「量的」をめぐる社会科学方法論争の整理――科学哲学の視点から」は、学術分野ごとに想定している研究目的や存在論の相違に伴って何が研究方法論として適切であるかが変わりうること、またそれと連動する形で真理理解についても多様性が生じうることを、同論集に収められた人文社会系諸分野の議論を参照しつつ科学哲学的視点を持ち込んで包括的な視野のもとで確認・整理するという作業が行われている。これは、真理の扱いについて人文社会科学諸分野に見られる多様性とその必要性を包括的な視野から整理するものであり、本研究課題と密接に関わるものと言える。なお、以上の中間報告的成果については、関東社会学会での関連報告をはじめとして、各大学や学会、研究会において検討会が行われる予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対応以外の真理実現性質について検討する上で、人文社会科学の多様な研究実践の詳細を把握するとともに、研究方法論的な観点からのディスカッションの機会を多く持つことができた。この作業の中で、学術分野ごとに想定している研究目的や存在論の相違に伴って何が研究方法論として適切であるかが変わりうること、またそれと連動する形で真理理解についても多様性が生じうることを、人文社会系諸分野の議論を参照しつつ科学哲学的視点を持ち込んで包括的な視野のもとで確認・整理することができた。こうした進捗については、その一部が井頭昌彦(編)『質的研究アプローチの再検討ーー人文・社会科学からEBPsまで』(勁草書房、2023)という形で公開されているが、全体の整理に当てられた「序章:なぜ質的研究アプローチを再検討すべきなのか」と「終章:「質的」「量的」をめぐる社会科学方法論争の整理――科学哲学の視点から」において真理概念の運用に関する記述的研究の意義と重要性を科学哲学的視点から明確にすることができたことに加え、人文社会科学の実践を解説した各章およびそこに付された「本章をよりよく理解するためのQ&A」などを通して研究分野の個別事情によってどのような存在論的前提が持ち込まれているかをより立ち入った形で明らかにすることができた点も重要な成果だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2023年度は、真理の扱いについて、人文社会科学諸分野に見られる多様性とその必要性を包括的な視野から整理する作業を行う。それと並行して、中間成果報告としての井頭昌彦(編)『質的研究アプローチの再検討ーー人文・社会科学からEBPsまで』(勁草書房、2023)について、各大学や学会、研究会において予定されている検討会などを通して、他分野の研究者とディスカッションの機会を持ち、各分野の研究実践において暗黙のうちに措定されている存在論的前提の炙り出しやそのような前提が置かれることの歴史的経緯と合理性の解明作業を進めていく。このような作業の中で引き続き社会科学分野での真理概念の運用実態を明らかにしていくと共に、プラグマティズムとの関係を考える上で重要な「科学の価値中立性」理念についての調査・分析も改めて進めていく。この作業を通して、真理の多元論に適合的な形而上学的描像をプラグマティズム経由で明らかにしていくという全体計画を着実に遂行していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響がまだ残っており、なかなか思うように出張や研究会開催ができなかったことで、次年度使用額が生じた。これらの経費については、2023年度により集中的に研究活動を進め、積極的な研究会開催を行うことで使用していく。
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Research Products
(2 results)