2020 Fiscal Year Research-status Report
図形推論の観点からのライプニッツ数理哲学の総合的解釈
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19K00032
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
稲岡 大志 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (40536116)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ライプニッツ / 数学の哲学 / 図形推論 / ユークリッド / 幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に以下の研究を行った。まず、これまで進めてきた研究を継続するかたちで、パリ期のライプニッツの数学研究の集大成である『算術的求積』(1675-6年)の主要命題の一つである命題6の証明について、数学史研究・哲学研究双方の先行研究を参照しつつ分析を行った。その結果、ライプニッツが図形を対象の表示の媒体と証明手続きの視覚化の手段という二通りに用いており、そのことが無限小幾何学の展開に際して重要な役割を担っていたと考えられることを明らかにした。研究結果は学会誌に投稿し、査読を経て掲載が決定した。また、2019年に公刊した自著『ライプニッツの数理哲学-空間・幾何学・実体をめぐって』の合評会をオンラインにて開催し、ライプニッツ研究者や現代の数理哲学の研究者ら3名に本書を徹底して批判してもらった。その結果、本書の問題点や課題点を明らかにすることができた。さらに、アカデミー版全集に未収録で、現在電子版が公開されている数学部門の遺稿を検討する研究を行った。必要に応じてマニュスクリプトも参照しつつ、ライプニッツのユークリッド『原論』研究の詳細を明らかにすることを試みた。その結果、ライプニッツのユークリッド幾何学批判の根幹部分は比較的初期のうちに登場していたのではないかという見通しを得ることができた。くわえて、『ユークリッドの公理に含まれる定義について』や 『『原論』の幾何学の図形分析の範例』といった重要度の高い遺稿については日本語訳も作成した。研究成果は学会にて発表した。また、ライプニッツ数理哲学研究の意義をより広い哲学史研究の観点から捉え直し、哲学史研究をモナドとして解釈する論文を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はCOVID-19の影響で海外・国内出張ができなかったが、学会や研究会がオンライン開催されたこともあり、また、研究に必要な資料は電子化されていることもあり、研究を進める上では大きな支障はなかった。また、1680年代のライプニッツのユークリッドへの関心という、先行研究ではほとんど未解明である論点についても、遺稿研究により解釈上の見取り図を得ることができた。こうした点から、研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も引き続きライプニッツの解析学研究における図形の機能を分析する研究、ライプニッツのユークリッド幾何学研究の詳細を明らかにする研究を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、国内・海外出張の予定がすべて取りやめとなったため、旅費として計上していた金額を次年度使用額とせざるを得なかった。使用計画としては、オンライン研究会や学会への参加環境の整備や、研究に必要な図書の購入などとして使用する予定である。
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Remarks |
発表資料などを公開している。
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