2021 Fiscal Year Research-status Report
図形推論の観点からのライプニッツ数理哲学の総合的解釈
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19K00032
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
稲岡 大志 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (40536116)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ライプニッツ / 数学の哲学 / 図形推論 / ユークリッド / 無限小幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は前年度に引き続き、ライプニッツの幾何学関連の遺稿の研究と、パリ時代に書かれた数学論文『算術的求積』の研究を主に行った。前者については、アカデミー版全集第7系列数学部門に収録予定の遺稿300頁ほどの読解を行い、ライプニッツの幾何学研究の進展をより詳細に解明する基盤を整えることを目指した。ライプニッツの幾何学研究の展開を把握する上で重要な資料である『ユークリッドの公理に含まれる定義について』『図形分析の範例』は前年度に日本語訳を作成したが、今年度はこれらの資料の注解の作成を進めた。後者については、関連する哲学史研究や数学史研究を参考にしつつ、『算術的求積』の命題の検討を行った。とりわけ命題11では、有限ではない領域の面積を求めるに際して、ライプニッツが連続律に依拠するのではなく、無限小線分と無限の線分との間に比例中項の関係が成り立つことから非有限領域の面積が計算可能であることをまず示していることを明らかにすることができた。さらに、その際、図形が推論を導くトリガーとしての役割を担っていると考えられることを、手稿の訂正箇所などを踏まえることで実証することができた。これまで検討を進めた命題1から11は求積の一般的手続きを確立するものであるが、本研究によって、無限小幾何学が計算アルゴリズムに展開する直前の時期に書かれた著作である『算術的求積』がライプニッツ数学研究において有する重要性を、図形の活用という観点を取り入れることで、より明確にすることができた。また、ライプニッツの時間構成理論についても研究を行い、有限主義的な無限小解釈のもとで、「瞬間」から現実的時間を構成する手続きを再構成できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度も引き続き出張などができなかったが、オンラインでの研究会や学会に参加することで研究者との意見交換は十分にできている。また、無限小解析学を確立するパリ時代の数学研究を図形推論の観点から研究を進め、また、幾何学研究関連の遺稿を細かく検討することで、本研究課題である「図形推論の観点からのライプニッツ数理哲学の総合的解釈」を確立する土台は順調に整っていると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も引き続きライプニッツの解析学研究における図形の機能を分析する研究、ライプニッツのユークリッド幾何学研究の詳細を明らかにする研究を行う。特に、『算術的求積』については個別の命題を技術的細部や数学史的背景も踏まえつつ検討する研究を進め、「図形推論の観点からのライプニッツ数理哲学研究」という本課題の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、国内・海外出張の予定がすべて取りやめとなったため、旅費として計上していた金額を次年度使用額とした。使用計画としては、オンライン研究会や学会への参加環境の整備や、研究に必要な図書の購入などとして使用する予定である。
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Remarks |
発表資料などを公表している。
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