2021 Fiscal Year Annual Research Report
Phenomenological research on the affect-event correlation
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19K00036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊原木 大祐 京都大学, 文学研究科, 准教授 (30511654)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宗教哲学 / 宗教作用 / 非日常性 / 限界状況 / 実存哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代以降の哲学理論における認識論上の相関関係に代えて、新たに「情動‐出来事」という対を現象性の根本構造として提起し、もっぱら現代フランス現象学の一派(中でもミシェル・アンリとジャン=リュック・マリオン)に由来する思想的リソースを活用しながら、その理論的射程を把握しようとするものである。ここでの探究は、出来事の受容が情動をその特権的な対応項とし、情動を通してこそ初めて出来事が出来事として「意味」をなすという発想が出発点となっている。 当該年度の研究成果は、これまで上記フランス現象学思想を含む大陸哲学に依拠しつつ剔抉してきた「情動‐出来事」連関を、新たに日本の宗教哲学思想によって再構成し、強化したという点にある。一方で、武内義範(1913-2002)がある時期に試みた宗教作用論を集中的に取り上げた(発表「武内義範の宗教作用論に関する一考察」)。武内の「事件」概念に着目することで、神学や神話学による解釈とは異なる仕方での聖性理解を提起し、フランス現象学における「出来事」論の系譜と日本の宗教哲学との予想外の交差を明らかにすることができたと思われる。また他方で、同時期にそれと類似の議論を行っている比較参照軸として、石津照璽(1903-1972)による解釈を考察している(未公刊論文「日本の宗教哲学における限界状況の実存的分析」)。『宗教哲学の場面と根底』の中で石津は、当時の人類学と心理学の知見を利用しつつ、危機への適応過程を分析し、その終極的な非適応から宗教性が生成する点を強調した。これは、武内の行為論が第一に据えている「事件」概念と奇しくも対応しており、また、両者が同じく情動による反応(とりわけ「不安」という形で)を考慮している点もパラレルである。
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Remarks |
項目「アンリ」・「ヴァール」『ハイデガー事典』昭和堂、2021年。
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Research Products
(1 results)