2019 Fiscal Year Research-status Report
Philosophical study of the story of the town based on the collective memory, guided by the image that appears in modernist poetry
Project/Area Number |
19K00037
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
神谷 英二 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (40316162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多孔性 / 物語 / 歴史の天使 / 証言 / 署名 / 敷居 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ベンヤミン『パサージュ論』における断片を「まちの物語」へと昇華させんとする試みを導きの糸にして、ベンヤミンのモザイクの思考に従い、主にモダニズムの詩を手がかりとし、都市の集合的記憶に関して、現象学と解釈学の理論を応用して分析し、そのエクリチュールのなかに、ベンヤミンの「弁証法的形象」を発見する方法を構築することを目的としている。 5年計画の初年度である2019年度は、ベンヤミンが描いた都市テクストを分析対象とし、そのなかでも特に「ナポリ」を重視して、ベンヤミンのモザイクの思考により、都市についていかなる記述が可能かを探究した。 そこでは、分析対象をベンヤミンのテクストに限定せず、デリダのブランショ論『滞留』を援用することにより、「ナポリ」の多孔性について語るベンヤミンの言葉は「物語」であるとともに、「証言」でもあることが解明された。その過程で、多孔質なナポリそのものがベンヤミンの言う敷居であることが明らかとなり、遠ざかりつつもその敷居に留まり、「歴史の天使」の眼差しをもって街を凝視することでのみ、物語を語りうることが明らかとなった。 またこれと同時に、デリダがサールとの論争の中で『署名、出来事、コンテクスト』において、署名の効果の可能性の条件について集中的に議論したテクストをもとに、口承された物語における署名の可能性について、「匿名という署名」を含めて、研究を進めた。 なお、これらの研究を通じて、本研究課題の推進にとって、ブランショの「忘却」と「中性的な語りの声」という概念が重要な手がかりとなることが新たに発見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、文献精査、理論構築が中心の研究であり、2019年度はいずれもほぼ予定通り進んでおり、その一部を学術論文として公表することができた。 また、本研究課題を推進するためには、モダニズム詩に関わる資料収集が不可欠であるが、この作業もほぼ予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、研究計画の変更の必要はない。また、研究を遂行する上での困難な課題もない。 したがって、2020年度は、当初の計画通り研究を進める。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた出張が、新型コロナウイルス感染症流行の影響で不可能となったため残額が生じた。 東京での緊急事態宣言解除後、資料収集のための出張旅費の一部に充当する予定である。
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