2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00041
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
藤野 寛 國學院大學, 文学部, 教授 (50295440)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アドルノ / 美的理論 / 啓蒙の弁証法 / モデルネ芸術 / 美学講義 / 歴史哲学講義 / ゲオルク・ベルトラム / ユリアーネ・レーベンティッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、第一に、月に一度のペースで合計9回の「美学理論研究会」を開催したこと、第二に、申請者が8月にほぼ4週間、ベルリンのヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフに赴き、アドルノの『美学講義(1961・62)』を閲読、筆写したことを挙げることができる。 「美学理論研究会」では、2006年この方、アドルノの哲学的主著である『否定弁証法』と『美的理論』、そして『美学講義(1958/59)』を原典購読しディスカッションすることが試みられてきたのだが、本年度は、この研究会を母体として刊行企画が立ち上がった『アドルノ美学解読』の出版準備のために全面的にエネルギーが傾注されるところとなった。9人の研究会メンバーによる共著論文集であり、各自が原稿を持ち寄って相互批判し検討に付するという作業が繰り返された。その結果として、2019年12月に当初の予定通り『アドルノ美学解読-崇高概念から現代音楽・アートまで』が花伝社から刊行された。 ヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフでのアドルノ『美学講義(1961/62)』の閲読、筆写は、申請者が2015年から継続しているものだが、本年度も、2019年8月の4週間にわたる閲読の結果、1961/62年冬学期の講義を9回分、筆写することができた。後は7回を残すのみとなったので、2020年には最後まで読み、写しきることができると考える。 なお、このベルリン滞在中に、Juliane Rebentisch 教授、Georg Bertram 教授と面談の機会を持ち、日本への招聘計画について、具体的に煮詰める作業をした。Rebentisch 教授は、2020年10月、Bertram 教授は2021年3月に来日され、講演会・研究発表会など共同研究が実現する見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「美学理論研究会」は、2020年1月まで、当初の計画通り合計9回実施し、その流れの中で『アドルノ美学解読-崇高概念から現代音楽・アートまで』(花伝社、2019年12月)の刊行を実現した。けれども、2020年2月と3月については、新型コロナウィルス問題のため、研究会実施を中止せざるをえなくなった。 アドルノの『美学講義1961/62』の筆写については、2019年8月のベルリン滞在において、順調な進捗を見、後は1962年2月1日、6日、8日、13日、15日、20日、22日と7回の講義を残すのみとなっている。 ドイツからのアドルノ研究者の招聘は、日程の都合がつかず、2019年度は断念のやむなきに至った。その代わり、2020年度中にお二人の招聘・来日を実現する方向で準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
「美学理論研究会」では、新たに、アドルノ『美学講義1957/58』の翻訳、刊行という仕事に取り組むことについてメンバー間の同意が得られ、その実現に向けて、実質的な研究準備に着手している。2020年度は、この仕事に全力を傾ける予定である。(ただし、目下、新型コロナウィルス問題のため、研究会は中断のやむなきに至っている。) アドルノ『美学講義1961/62』の閲読・筆写については、2020年夏に筆写し終えることができる見込みである。直ちに、次の『歴史哲学講義1957』の閲読・筆写に着手したいと考えている。 ドイツからのアドルノ研究者の招聘については、2020年10月の Juliane Rebentisch 教授の招聘、共同研究から始めることができると期待している(が、コロナウィルス問題の推移を見守る必要はあるだろう)。
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Causes of Carryover |
第一に、ドイツからの研究者招聘が2019年度と2020年度にそれぞれお一人ではなく、2020年度にお二人になる見込みとなったため、本年度使用額が予定を下回った。 第二に、新型コロナウィルス問題で、2020年1月の時点で、「美学研究会」の活動が完全にストップのやむなきにいたり、交通費など、金銭支出の必要が無くなった。
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