2021 Fiscal Year Research-status Report
Merleau-Ponty on Theory of Art and Language
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19K00043
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
本郷 均 東京電機大学, 工学部, 教授 (00229246)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メルロ=ポンティ / ミシェル・アンリ / 音楽 / 言語 / 情感性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)2021年度は、前年の論文「メルロ=ポンティの存在論における音楽の位置」によって得られた「存在の渦を象る音楽」という知見から、それが知覚に対していかなる意味を持つか、という問いが浮上してきた。この点について、早稲田大学哲学会にて行われたシンポジウム「感覚の地平-合目的性/情感性/倫理」(2021年7月10日)で提題を行う機会を得て、「音楽と情感性(La musique et l'affectivite)」として改めて考察し直すことができた。この提題では、知覚という場面においては、音楽が存在に対して持つ意味を、情感性と対応するものとして捉え直し、同時にミシェル・アンリにおける情感性の問題とも関連させて考察した。さらに、この問題が、もう一つの課題である、「言語」の問題と通底していることについても考察した。 (2)日仏哲学会誌第26号で、書評「酒井麻依子著『現れる他者 消える他者』」を担当した。本書は、メルロ=ポンティ中期のソルボンヌ大学・児童心理学講座で行われた講義の記録に関する研究書である。本書の書評を通じて、特に芸術論と関わるスタイル概念の検討を行った。 (3)以上の2点から、「見えるようにする」ものとしての芸術と肉との関係と、その関係において、制度化されたスタイル(様式・文体)が持つ役割について、一定の成果を得ることが出来た。
なお、2021年度が研究計画では一応の完結年度となっているが、covid-19の影響で渡仏できなかったことなども含め進展が遅れているため、一年延長をいたします。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
依然として、Covide-19の影響で渡仏できなかったことに加え、教科書執筆の業務などが重なってしまったため、想定以上に遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
可能であれば、渡仏して、草稿から芸術に関する思想の読み取り確認を行いたいが、それができなかった場合には、現在、予定しながら進めることができていないジャンケレヴィッチ「ほとんど無」と音楽との関係を補助線として、メルロ=ポンティにおける肉と言語と理念との関係について、探究を進める予定である。 また、九鬼周造の音韻論の研究が現在のところ保留となっているのだが、可能な限り進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進展状況に鑑み、研究期間を一年延長したため。
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