2019 Fiscal Year Research-status Report
Biopolitics and Social Philosophy in the Times of Anthropocene: Critical Intervention in Climate Justice
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19K00050
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
箱田 徹 天理大学, 人間学部, 准教授 (40570156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気候変動 / 採取 / 社会哲学 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動問題をめぐる社会運動と社会哲学との交点を探るという本研究のテーマを、採取または採取主義という観点を導入することで研究を進めた。今日、世界各地で反体制運動やさまざまな異議申立の動きが起きる一方、気候正義運動にはかつてないほどの関心が向けられ、大勢の人びとが参加している。世界大で展開するこれら2つの「反乱」には「システムへの反乱」という共通の特徴が見られる。いわゆる広場運動やオキュパイ、香港や台湾、韓国での大規模な抗議行動、そして黄色いベストといった一連の運動は、既存の社会のあり方に根本から異を唱えている。他方、気候正義運動は、温室効果ガスを大量に消費する社会の大規模かつ速やかな転換の必要性を訴える。これらの2つの運動が採用する、占拠や封鎖といった戦術は、問題となっているシステムの、また人・物・金・情報の円滑なフロー(流れ)を止めることによって、現代社会が抱える深刻な社会経済政治的矛盾を露わにすることを目的とする。例えば、ドイツ・ケルン郊外における褐炭鉱山拡張反対運動の実践や、ドイツのラディカルな気候正義運動には、そうした効果を具体的に見てとることができる。社会運動が止めようとするフローへの批判は、社会哲学の見地から「採取」または「採取主義」の問題として捉え返すことができる。採取とは地球上にある天然資源の大規模開発を指すと同時に、人びとが営んできた豊かな社会的関係・社会的知性・社会的生産を利用し、価値を生産することだ。その活動は、工業とは異なり、資本の出現にはるかに先行して存在する富の諸形態に依拠しているという側面もある。こうした採取の動きを、ラディカルな現代資本主義体制における、金融とロジスティクスとの連関のなかで論じている。そしてこの両者を連結することが、気候正義運動の実践的・思想的意義を考察する上で大きな意義をもつことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献研究はおおむね計画通りに進んでいるが、春の現地調査がCovid-19パンデミックの関係で現地での予定変更や移動制限などに見舞われ、予定どおりに実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Covid-19パンデミックの影響を予測することができないため、今後は思うようなかたちでの現地調査ができないかもしれない。このため現地に行かなくても遂行可能な調査(文献や資料調査、オンライン調査など)を組み合わせるなどしていきたい。
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Causes of Carryover |
Covid-19パンデミックの影響で調査を予定より早めに切り上げたため残が出てしまった。20年度の調査費に回すこととする。
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